建築家 田口知子の日常をつづったブログ -18ページ目

「桜の木のある住まい」現場レポート20160513

少し時間があいてしまいましたが、今日は世田谷区の住宅の現場レポートです。


外壁、屋根が終わり、防水と断熱材が吹き終わりました。

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 鉄骨造なので、さまざまな素材の取り合い部があり、雨漏りを防ぐために、あらゆる細部、端部、入隅、出隅の納まりを執念深くチェックしていきます。アスファルト系防水シートは、面としては強いですが、末端部の重なり、入隅や出隅での接着方法のわずかな重なり部で毛細管現象が発生し、漏水が起きる可能性があることを過去の経験から学んだので、自分は防水の鬼と化し、2重、3重に防水のディテールを追求することに努めます。


 今回は外壁がアスロックというコンクリート板で、真ん中にサンドイッチされた穴が、入った水を排出してくれるもので、外壁シールまわりの水に少し安心感があります。


 とはいえ、外壁と板金との取り合いやルーフテラスといった危険個所がたくさんあり、1重目の防水の裏側に2つめの防水面をつくり、中に入った水を外に出す最下部の納まり工事監督と相談して進めますが、見解の相違があった場合はちょっとした戦いになることも少なくありません・・。


 工事監督と設計者の経験、それらをかけあわせた知識と技術で現場が強くなり、建物の品質が守られる、ということを実現していきたいと思います。そのためにはひとつひとつの現場での経験が宝物です。
 


 

祝・建築学会賞作品賞受賞!~「武蔵野プレイス」

自分がかつて勤めていた長谷川事務所時代の先輩である、比嘉武彦さんと川原田康子さんのユニットが設計された、「武蔵野プレイス」が今年の学会賞の作品賞を受賞されました!本当におめでとうございます。うれしくてブログに書いてしまいます。



 この建築は公共建築の図書館でありながら、館の中央においしいごはんを提供するカフェがあり、そこで図書館の本が読めるという企画で空間を構成されています。
 この建物は震災直前、2011年1月に竣工しましたが、もともとのプロポーザルコンペ2004年。さまざまな経緯を経て竣工まで7年の月日を要した建築でその経緯の大変さは話を聞いていました。さまざまな状況の変化、要件の変化に応じつつ、完成させ、こうして日本の建築の最高峰である賞を受賞されたお二人に、尊敬と感動を覚えます。

 武蔵野駅前にあって、今では年間来場者160万人。人があふれていて賑わいがあるのに、図書館らしい落ち着きもあり、さまざまな人たちが思い思いに時間を過ごしている中に身を置く心地よさを発見する建築です。それは、柔らかい床や丸みのある天井のコーナー、モダンでシャープなディテールが共存しつつ、可愛らしいデザインもある、バランスの良さ、すべての箇所に濃密に意図がこめられたデザインのディテールがありました。真ん中の大きな吹き抜けにカフェがあり、館全体に食器の音やおしゃべりが柔らかく反射するざわめきの空間が空間の豊かを増しています。

ソフトとハードの見事に融合した、人に愛される公共建築の傑作だと思います。
公共建築が「ハコモノ」と非難されて久しく、建築を作ることそのものに反感を感じるような、昨今の厳しい状況の中で、建築の力が、人のにぎわいを生み出し、来場者に心地よい空間を提供する、その可能性と奥行を感じることができる建築だと思います。

 人を集め、愛される建築、訪れた人を幸せにする建築、そのような建築を、自分もいつか実現したいです。(*^。^*)




MASセミナー21 開催報告 「日本人的メンタリティとは?」

いよいよ東京も桜が満開ですね。泉ガーデンの桜が見ごろになっていました。



先日、3月5日にJIA港地域会で「MASセミナー第21回」を開催しました。
テーマは「日本人的メンタリティとは?」。今日は、桜を見てあらためて、これぞ日本人の心の原風景かと思いました。日常的に魅力を感じること、面白いものの中に、日本人の精神性として何かとつながる糸を発見できないかという試みです。



自分がピックアップしたテーマは「鳥獣戯画」。
その切り口を少し掘って考えてみおようと思いました。きっかけは2015年10月に上野国立博物館にて開催された「鳥獣戯画展」です。教科書では見たことがあっても実物を見たことが無かった「鳥獣戯画」平日の昼なら空いているかと行ってみましたが、数千人の来場者が列をつくって3時間待ちという状況にびっくりしました。この異常な人気はいったい何なのだろう?と考えた時、日本の漫画文化の発生と世界に注目されるアニメ文化。現代のスーパーフラットという言葉を生んだ村上隆氏の作品につながる戯画の精神。ここに日本人的なメンタリティのヒントが隠されていないだろうか、と仮説を立てて探究してみました。



まず背景となる日本の歴史をあらためて概観するところから始めました。
歴史を振り返った流の中で日本人のメンタリティの断層が存在する、というのが最初の出発点にしてみました。明治維新、第二次世界大戦、そして東日本大震災という大きな出来事が日本人のメンタリティに深い断層を作ってしまい、誇りや自信を喪失する構造が生まれているのでは?ということで、断層をいったん肯定し、明治以前の文化、芸能、美術を新しい視点で見ることに可能性を感じます。




最初は、なんと壮大なテーマか、とも思いましたが、参加された方々から戦時中の経験や現代のアート界の閉塞感など、さまざまな意見が飛び出し、興味深く考えさせられる充実の時間になりました。