この世界の片隅に | 海をみていたい

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日常。思ったこと、メモがわりだったり、テンションあがって発信したかったり、観劇、観戦、鑑賞日記です。
濱田めぐみさん、町田樹さん、パナソニックワイルドナイツ好き、現在連日HIDEKIさんを思い出しています。
趣味は携帯写真。

なんの予備知識もないまま日生劇場へ足を運びました。

なんとなくですが、いつもとは客層が違う気がします。普段のミュージカル層(中高年の女性多数)とは違って多少ですが男性が多いようでしたし、年齢層も若者、中年、老年と幅広く感じました。これはこの原作のせいなんですか?

根強いファン層を感じました。

 

 

 

私がこの作品を観ようと思ったのはまずは海宝直人さん。(舞台を観るまで知らずに海宝さんが主役だと思ってました)

そして、舞台が呉、加えて広島も関わっているらしいという背景からでした。

『呉』に馴染みはありませんが私の記憶にない幼少の頃に1度だけ訪れているそうです。父のお父さんが呉の大きな呉服屋さん出身で、男兄弟が多かったからみんなあちこち婿養子に入ったそうです。その呉から東京へ婿入りされた父のおじさん宅へは小さい頃、何度も遊びに行きました。小さいときに両親を失くしていた父はおじさんちに行くのがとても嬉しそうでした。

私自身の本籍が長い間、ちょうど原爆資料館の建っている敷地の川沿いの船着き場のある辺り(父の実家の問屋があった場所)だったのが広島市ということからこの出し物に興味をひかれたんです。

先日観た地球ゴージャス儚き光のラプソディーでも出てきましたが幼年兵という存在。あの舞台では地雷を積んで敵船に突進するという役目の実という若者が出てきましたが、同じように私の父も飯能辺りの飛行場から突撃するために幼年の特攻兵として全国各地から選ばれ、所沢で英語の勉強などしていたらしいんです。(小学校しか卒業していない父が後年、米国に永住したのはたぶんその影響かと。父から生前、何もきいていなかったことが、こちらから訊こうとしなかったこと、悔やまれます。)

昭和20年の7月頃、広島から父の両親が息子との最期のお別れをしに上京されたらしいのですがそのわずか数週間後にほぼ実家の真上に原爆が落ちて、そして戦争が終わって、結果、父が生き残った現実があるので、その地名や時代を目にすると、引きずられるように足を運んでしまうんです。

 

原作はマンガらしいのですが、

舞台化されたこの作品の音楽的クオリティが高く、すんなりこの世界を描いたミュージカルの世界に浸れました。

このところ逆輸入というか日本人を本場のウエストエンドやブロードウェイの役者で演じられる作品を日本語に翻訳して上演される外国から観た日本人像と日本語がはまらないメロディに無理やり意味を乗せるという二重に分かりにくい現象がありましたが、

日本語台本に合わせて日本人作曲家がJポップに近いメロディに乗せたことにより違和感のない仕上がりになっています。

加えて海宝直人さん(の上手さ)だけが目立つことのない共演者たち、アンサンブルの皆様の歌唱力の高さ、芝居歌のクオリティが高くて素晴らしいんです。

どの方がどの配役か香盤表でもない限り、あの場面のソロは誰とか、あそこでのあの役、とか言い当てられませんが、間違いなく彼らのクオリティの高さがこの作品のレベルの高い仕上がりに繋がっています。

白木美貴子さん、川口竜也さん、加藤潤一さん

飯野めぐみさん、家塚敦子さん、伽藍 琳さん、小林遼介さん

小林諒音さん、鈴木結加里さん、高瀬雄史さん

丹宗立峰さん 中山 昇さん、般若愛実さん、東 倫太朗さん

舩山智香子さん、古川隼大さん、麦嶋真帆さん

(ミュージカルを見慣れているかたなら、この役者さんたちが常に作品を支えていることをご存知と思いますが)

 

この『この世界の片隅に』というミュージカル作品、

文化庁とか後援についたら良いのに、とも感じました。

東京だけでなく地方公演もありますが大阪、御園座、広島でも数日ではなく長期の公演をしてほしいし、なんなら全国各地の学校の観劇行事に入れてほしい位、今、いちばん観てほしい作品です。

 

もともと海宝さん以外の出演者を把握していなかったのですが、コンビ歴が多い昆夏美さんとの場面ではミスサイゴンのキムの陥落場面かと、或いはレミゼのバリケードのエポとマリウスの場面を彷彿させられました。その海外の名作が日本語の日本人の作ったこのミュージカルで遜色なく、むしろわざわざ頭で置き換えることなく、すんなり自然に日本語がメロディになっている、ストレスのないという事実。

とにかくすごいから観てほしいです。

 

昆ちゃん演ずる役名がすずさんで、先日の地球ゴージャスとも被っていて、

なぜだかわかりませんが、今、なんとなく生きている私たちへの強い反戦メッセージが伝わってきます。

 

そしてめちゃくちゃ上手いのが音月桂さん。元々どの作品でも全力な工夫や努力家な一面が伺える美人さんですが、この作品でも抜群に好いんです。最上級に上手い海宝さんと同じ舞台で、若手ナンバーワンクラスの昆ちゃんと同じ空間で存在が光るんです。そしてもうひとりの美人さん、桜井玲香さん。たぶん何かの作品で観たことあるはずなんですが、その時はなんとも思わなかったのに今回、やはりこの物語をダークにしない役柄上難しい存在ですが、観客として、彼女を好意的に感じましたから、上演中の観客の無駄なはてなを引き出すことなく、やさしさに包まれた作品感を醸し出すことに成功しています。

子役さんたちも素晴らしいんです。

特に幼子の晴美を演じる鞆琉那さん、なんとお読みするのでしょうか?彼女が身体が小さいだけで中身はベテランなんじゃないかと思えるくらい表情が上手いんです。

 

ほかのキャストで観ていないので、キャスト違いでどのくらい変わるのか、それとも根底は変わらないのか、それも気になりますが。
東宝さん、
もっとこのオリジナルミュージカルをこの素晴らしいキャスト陣のまま浸透させてください、とお願いしたいです。