赤井寅三 セラピー -11ページ目
 去年の秋から、整体の先生に体を診てもらっている。耐え難い肩こりが背中や腰まで下りてきて、もうどうにもならん程にガッタガタになったことがきっかけだった。
 藁にもすがる思いで初めて受けた整体は、びっくりするほど私に合っていた。体全体が宙に浮きそうなくらい軽い!今までどれだけの重さに我慢していたんだおれは!うれしくて八事の交差点をわざわざ歩いて一周したほどだった。鍼とお灸がここまで的確に効くということを知ったのだ。東洋医学ってすげえ!
 さらにこの先生をすげえと思ったのは、私の背中や腕の筋肉を見て、「野球をやっていたこと」「外野手だということ」「右投げ左打ちだということ」「シュートよりカーブの方が投げやすいこと」をズバズバ当てたことからだ。すげえ!優秀な興信所みたいな整体師!聖者!
 
 そんな腕と目の良さに惚れ込んで、今も毎月一度診てもらっている。ひと月おきに診てもらって面白いのは、その月その月で体のがたつき具合が違うことだ。
 
 先日は診てもらったあとで、先生から「今月は健康的に疲れてますね」と言われた。はぁ?健康的に疲れている?
 「今だから言いますけど、先々月とその前は本当にガッタガタでしたよ。精神的に追い込まれている疲れで気が滞ってましたから」
 ははあ、なるほど。6月から7月の辺りは会社の仕事がそういう風なアレだったからな、と合点する。
 「今日はね、そういう精神的な追い込みが少なかったですね。今年の夏の猛暑から来る疲れと、冷房や冷たいものをたくさん飲んでた所為での疲れです。まあこれは誰でもある疲れですから」
 私はまた、ははあ、なるほど、と言ってしまった。「なるほど」が私の口癖なんだと気付いた。
 「だから、<健康的に>疲れてるんです。夏の疲れ以外は、いたって健康っていうことですね」
 へええ、そういうことなんだ。そう言われると、そういうことなんだ。
 「何か最近、いいことありました?っていうか、気持ちが前に向いてませんか?」
 ええ、ええ。そりゃもう。
 会社員を辞めて、独立して自分の仕事をやっていきたい。その気持ちがここ数か月でガンガン具体的な妄想になってきているから。「変化できる自分」が楽しみでしょうがないですから。
 
 確かに、こんな気持ちの状態は久しぶりだ。
 どうしても、うつから抜け出して完全に社会復帰できるようになった2年前の春を思い出してしまう。新しい扉を自分の手で開けていくドキドキ感が、たまらなく嬉しい。
 
 …あとは貯金か。当面の生活費…。ううう。それだけが不安なんです。
 
 
 
 
 
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 煙草を吸い出したのは20歳の頃からだから、これまでの人生の半分以上、吸い続けてきた。
 1日に20本以上吸っていた時期もあった。今は2~3日で1箱だから、1日当たり7~10本ぐらいだ。禁煙に挑んだ経験はないけど、本数は確実に減ってきている。
 
 減ってきているのに、ここ最近、吸えば胸がムカムカすることが増えてきた。
 昼間、会社員として仕事をしていると、区切りを入れたい時などはどうしても喫煙所に行ってしまうのだが、いざ煙草を吸いこむとムカムカと気持ちが悪くなってくるのだ。後悔のような気分がしてきて、「何でおれはこんなのを吸ってるんだっけ?」と思えてくるようになったのだ。
 くどいようだが、吸う本数は減っているのに、この吸い過ぎた時のような気持ち悪さは何なんだ?
 
 このことを会社の先輩に話した(喫煙所で)ら、「ドーパミンがようけ出とるんやな」と返ってきた。ドーパミンなら知っている。脳内快感物質だ。セロトニンとかアドレナリンとかヒスタミンとかと一緒に、うつ闘病時代にいろいろ学びました。
 でも、何でドーパミンが煙草と関係あるんだろう?
 先輩は旨そうに煙を吐き出しながら答えてくれた。
 
 「おれ、自慢やないけど禁煙に二回成功しとるんやわ。禁煙外来でもらう何とかっちゅう薬を飲むと、ドーパミンが常に薄く出てる状態になって、それが煙草を吸ってる状態の代わりになるんやね。その状態で吸うと、気持ち悪いんやわ。ほんでだんだん吸う気にもならんようになってくるんやわね。あとは『吸う』っちゅう行動の習慣を、別の行動に置き換えられたら完璧や」
 
 ほうほう、なるほど。
 
 「ムカムカするのは、吸い過ぎか、ドーパミンが出とるか。その二者択一やで」
 
 喫煙本数が減ってるのに、つまり吸い過ぎでもないのに吸い過ぎのような気持ち悪さがあるということは、ドーパミン説が強くなりますね。そうか、今のおれはドーパミンを出してるのか。
 
 「ドーパミンが出るようなええことあったの?」
 
 ええことというか…。思い当たる節はある。
 それは、自分の近い将来にはこうしたいああしたいということを、考える癖がついてきたからだと思った。
 会社員から抜け出して、自分のやりたいことをやることで誰かのお役に立ちながら生きていくこと。そういう生活をしていきたくて、いろいろ妄想している時間が増えた。その妄想の時間は本当に楽しい。だから、自ずとドーパミンが出てきちゃってるんじゃないか。
 たぶん、それだ。
 
 「まあ、おれが言うんやから確実やと思うよ。自慢やないけど二回、禁煙に成功しとるからね、おれ」
 
 そう言って先輩は新しい煙草に火をつけた。「禁煙成功の実績が二回ある」ということは嘘ではないから、何もつっこまずにおいた。
 
 
 
 
 
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 「仕事だからやりますけど」という言葉を時々耳にしたり言ってしまったりする。
 「本当はそんなことしたくないのにやらなきゃいけないから、渋々ですがやりますよ、仕事だから」という、やる気もモチベーションも地べたを這った状態。「仕事」というより「作業」。ささっと片付けて早く帰ろう。―――どんな職業でもそういう意識になる瞬間があるのではないだろうか。ありませんか?
 「でも、むしろその方が人間らしくていいのかも知れない」。
 「全ての行動に全精力を注ぎこんでいたら、疲れちゃうから」。
 「お金をもらえるんだから我慢しなきゃね」。
 …おおお、自分ながらすげえ。言い訳ならぶくぶくと湧いて出て来るぞ。
 
 って言ってる場合じゃない。やっぱり仕事は、できるだけの精力を傾けて真摯にやるべきだ、と改めて気づかされたのだ。それは、ある大大大先輩のお話を伺えるチャンスをいただいたことがきっかけだ。
 
 その大大大先輩とは広告業界の大御所と言える方で、日本人なら誰もが知っているだろう広告に数多く携わってこられた方だ。私はかつて講演を拝聴させていただいたことがあるので、ここでは「先生」と呼ばせていただく。
 先日開かれた、先生を囲む会に私を誘ってくださったのは、以前大変お世話になった恩義のある方なのだが、その方も先生を「師匠」と呼んでいらっしゃる。そんなハイレベルな集まりにこんな私が誘われたのだ。そりゃあ緊張もする。だらしのない恰好では失礼だ。仕事が終わった足で駆けつけるからそれほどラフではなかったが、出していた半袖シャツの裾をチノパンの中に押し込んで参加した。
 
 出たり入ったりの方を含めて14~5名ほどの参加者の中で、私は若い方から二番目だった。錚々たる先輩方の和気あいあいとした表情からも、先生がいかに慕われて尊敬されているのかが伝わってきた。
 先生の良く通る声で語られる数々のエピソードは、もう私ごときがこの場にいてもいいのだろうかと思うほどとてつもなく、テレビで「プロジェクトX」や「情熱大陸」を観ているような気分に近かった。とは言え、それは単なる自慢話などでは決してない。先生のお話を聞いていて強く感じたのは、紛れもなく、広告主と広告に対する愛だった。
 広告主を真っ直ぐ見つめ続けて仕事に取り組む姿勢。広告主がこれまでどういう歩みを経て今存在しているのかを先生自ら紐解き、社会における存在意義を浮き上がらせる。先生がアウトライン化させた企業としての輪郭は、広告主本人すら気付いていなかった姿だったりもする。だから、完成された広告にロマンと情熱とメッセージが宿り、時代も越えていくのだ。
 
 やっぱり仕事というものは、真正面から向き合ってなんぼだ。
 尊敬できる方の存在は、自分がこれから歩む道を何よりも明るく照らしてくれる。恥ずかしくない生き方をしなくちゃあな、と思い直した。
 
 
 
 
 
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 その若者は私が乗った次の駅で地下鉄に乗り込んできた。がっしりした体躯だが、松葉杖をついている。よく見ると片足のサンダルのつま先から包帯で巻かれたギプスがのぞいている。日曜日の午後、車内は程よく空いていた。私も去年の秋は松葉杖での生活だったので、これぐらいの空き様でないと地下鉄には乗れないことがわかる。
 私は立って本を読んでいたのだが、気になって若者を観察した。彼は、扉付近でスマートフォンを覗き込んでいる高校生に松葉杖が当たらないように気遣っているかのようにうまく避け、入り口付近から2~3歩進んだ。
 「おお、お兄さん、杖のお兄さん。座れ、座れ」
 と、連結部分の隣の3人掛けの優先席の壁側に座っていたおじいさんが大きな声で呼びかけた。一つ横にずれて、今まで自分が座っていたシートをポンポン叩きながら。この二人は、知り合い同士のようには見えなかった。
 「すいません」と若者は2本の杖を片手で持ち、ギプスの足を浮かせたまま、空いた方の手で壁に手を突きながら慎重に腰を下ろした。
 
おじいさん:「どうした?怪我か?」 (どう見ても怪我だが。)
松葉杖の若者:「はい。アメフトの練習で…」
おじいさん:「アメフト?おれもやってたよ。コーターバック」 (クォーターバック?)
松葉杖の若者:「え、そうなんですか!」
おじいさん:「若い頃だけどね」 (ま、まあ、そうでしょうね)
松葉杖の若者:「ぼくもクォーターバックなんですよ」
おじいさん:「そうか!へえ。コーターバックか。大学生?」
松葉杖の若者:「はい。○○大学です」
おじいさん:「…新しくできた学校か?」
松葉杖の若者:「いえ、結構昔からあると思うんですけど…」
おじいさん:「そうかー」
松葉杖の若者:「………」
おじいさん:「アメフトは、昔は珍しくてね。やる人間が少なかったよ」
松葉杖の若者:「はあ、そうですよね」
おじいさん:「若い時しかできんからなあ」
松葉杖の若者:「まあ、そうですよね」
おじいさん:「そうかー」
松葉杖の若者:「………」
おじいさん:「………」
 
 あれ?話題が尽きたか?と思ったら、おじいさんはもう一度「そうかー」と言って立ちあがった。次の駅で降りるらしい。若者を振り向いて、
 
「まあ、がんばりなさい」
 
と言って扉から出ていった。
 
 年齢の離れた二人のやり取りをちらりと見ていた私は、正直に言うともっとアメフト話が盛り上がるのかと期待していたので、やや肩透かしを食らった気もした。ヤマもオチもない会話だったのは確かだ。
 でも、短い時間でありながら、怪我をした若者を気遣っていたおじいさんを、私は尊敬した。っていうと重いから言い直せば、リスペクトした。そんなおじいさんと向き合った松葉杖くんもナイスだった。
 私からも「まあ、がんばりなさい」と言いたくなったけど、それは止めておいた。
 
 
 
 
 
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 うつに苦しんでいる時に外出すると、決まって気後れがしていた(詳しくは「うつ#6(気後れブルーズ)」を参照してください)。
 ちょっと街までお買い物、という程度の外出も無理なので、ましてや長時間の電車や新幹線に乗って一泊二日で旅行、なんてもっての外だった。疲れたらすぐに帰宅して横になれる安心感がある距離でないとダメだったのだ。
 だから、その後で自転車散歩にはまった時も、自宅を中心とした渦巻き状のコースを走ることが多かった。そういうコースなら、いつくたばっても比較的すぐに帰宅できるのだ。
 なんか今思うとかなりな制限。こういう移動をする習性の動物もいそうな気がする。
 
 その後、だんだん病気が軽くなるにつれて、自転車散歩も遠くまで行けるようになっていくと、多分これが本来の私の行動パターンなんだろうが、渦巻き状のコースが一気に直線コースへと変わっていった。
 行き先がたとえ県内だったとしても、相当遠くへ来れた感じが嬉しかった。見たことのない名前と顔の市会議員の演説ポスターとか。電柱に貼り付けてある歯医者の看板の電話番号が、馴染みの薄い市外局番になってたりとか。そんなのを見つけると、遠出感がじわじわと湧いてきた。…かなり地味な喜び。でも、何となく自分が成長できた気分になれた。正確には成長ではなくて回復なんだけど。
 
 とは言え、泊りが発生する旅ができるようになるのはかなり後のことだった。まあ、手頃にぷらっと行って帰れる日帰り旅の楽しさを知っちゃったっていうこともあるが。一昨年に三河湾の佐久島に泊まった一人旅に行った頃には、もう病気もとっくに消えていた。
 こうやって、ひとつひとつずつ、当たり前のことができるようになってくると、自分でも病気が軽くなっていく手ごたえが感じられるのだ。手ごたえの「ぐいっ、ぐいっ」という音まで聞こえてくる気がするのだ。
 
 さて、今年のお盆休みには、瀬戸内海へ行ってきます。新幹線に乗って、ホテルに泊まって、旨いものを食べて、というごくごく当ったり前の一泊二日の旅。そういうごくごく当ったり前のことができることに、本当に感謝です。
 
 
 
 
 
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