オリジナル小説 【ティアーズ・イン・ヘヴンなんて】(第8回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(249作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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そんなモヤモヤした気持ちを引き摺っていた中で、圭樹が白井のレッスンを受けるようになってから半年が経ち圭樹の区切りの課題曲選曲の時が迫って来ていた。白井の個人レッスンの課題曲の発表会の場には、それまでの実績から音楽業界からも少なからずの出席者たちも見込まれていた。元々白井のレッスンを受ける以前から既にそれなりの技量を身に付けていた圭樹は、そんな中でかなり注目されることを白井は予想していた。

『そろそろ課題曲の選曲の時期になって来たけど、どうする?』
白井が圭樹に話を切り出した。
『何の意味があるの?今までにも色々な楽曲をレッスンしてもらって来たのに、今更敢えて特定の楽曲の演奏を決める意味が分からないよ』
最近では圭樹の話しぶりも、当初の頃とは違って柔らかな物言いに変わっていた。

『俺とお前だけのレッスンの話だけではないよ。この課題曲については、この音楽教室の生徒たちが卒業前の区切りとして部外者の人も交えた場所で披露する大切な楽曲だよ』
白井は課題曲の意味合いを圭樹に話した。
『何でもいいの?』
短く圭樹が白井に尋ねた。

『まあ何でもいいと言えばそうだけど、やはり今の音楽の水準にどれだけついて行けているか評価を受ける訳だから今現在話題になっている楽曲を選んだ方が無難だろうね』
ある程度具体的な選曲の仕方について、白井は圭樹にアドバイスした。
『基本的に俺は自分が俺って上手いだろうみたいにテクニックを曝け出すような演奏スタイルは好きじゃないから、淡々と自分自身が一番心地よく演奏できる楽曲にしたいと思うけど?』

確かに圭樹の言う通りだった。圭樹はそれまでの白井との個人レッスンの場でも、自分のテクニックを見せびらかすより何事もないように自然体で演奏するのが彼のスタイルだった。そしてそのことはある意味白井が圭樹を一番評価するポイントだったかもしれなかった。

『俺はお前の演奏を聴いていて、お前のその拘りは好意的に受け入れているよ。いや寧ろ積極的に評価している。でもそれと今回の事とは別の話だ。ある意味、生徒たちの卒業後の進路にも影響を及ぼすかもしれない重要な問題かもしれない』
『もう卒業と言うことになるらしいから、一つ尋ねたい事があるけど・・・?』
珍しく歯切れの悪い感じで圭樹が白井に尋ねて来た。

『何でも!』
『そもそも先生にとって、音楽とは何なのかな?』
それまでここまで根源的な内容についての圭樹からの問い掛けは無かった。改めて圭樹から問われた白井は言葉に詰まった。
『難しい話しだね。勿論俺にとっては生活をして行くための糧の部分は大きいと思うけど、それだけでも無い様な気もするし・・・。俺は43歳まである時期を境にずっと独りきりに拘って生きて来たところがあってね。そんな俺が周囲とコミュニケーションする唯一のツールが音楽だったかもしれない』
白井は自分の考えを頭の中でまとめながら、圭樹に話した。

『音楽が単なるツール?それってどう理解したらいいの?俺にはよく分らないけど』
白井の中途半端で言葉足らずの話には、圭樹は納得しなかった。

『確かにツールと言う言葉は単なる道具みたいな響きがあるから、言葉が足りなかったかもしれない。俺が言いたいのは、俺は言葉と言うものをあまり信用していないと言うことだ。その場の流れや雰囲気で自分の思ってもいないことを、つい言葉にして表現してしまうことがあるように思えてね。言葉は時として平気で嘘を語ることが出来る。でも音楽ではそんな事は無い。

その音楽を聴いて悲しい時には生身の身体がそう反応するということ、そこには嘘と言うものが存在しない。ここではこう感じなければいけないなんて自分の感情を周囲に合わせる事なんて、そんな素振りは出来ても本気でそれをコントロールすることなど無理だね。俺が言いたいのは、音楽は感情表現を相手に伝えるための有効なツールだと言うことだよ』


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの
【66】メッセージボードのある駅
【67】僕が反逆児だって?
【68】街角グラフィティ
【69】すれ違いのダイアリー
【70】永遠の噓だったなんて
【71】ジュークボックスが鳴り続けてる
【72】君が好きだったプレイリスト
【73】深夜放送ラプソディ
【74】マイ・ララバイ・ソング
【75】オブラディ・オブラダ
【76】ミュージック・メモリーの奇跡
【77】スティングが好きな君がいた
【78】ビーチボーイズが流れていた夏
【79】作詞家が消えた日
【80】5年前のプレイリスト
【81】ホテルカリフォルニアへ行こう
【82】アローン・アゲイン
【83】花のサンフランシコ
【84】永遠のツイスト
【85】待ってよ ミスターポストマン
【86】ビヨンド・ザ・リーフ
【87】別れの時はフランソアーズ・アルディ
【88】あの頃はビージーズだった
【89】Oneは一番悲しい数
【90】いちご白書とサークル・ゲ―ム
【91】キネマの旅人


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