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《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(240作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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★3月23日(土)24(日)、下記作品が無料購読できます

小説短編集 【64】レオンラッセルで聴きたいから(原稿用紙30枚) 


※皆人は大学卒業式当日を神楽坂にあるオープンしたばかりのカフェで迎えていた。新規開店したと言っても、カフェは今一部で流行っている昭和の風景を再現していることが売りのカフェだった。皆人が大学卒業後このカフェで働くことになったのは、大学時代にお世話になった音楽事務所の代表の紹介からだった。
 
 カフェのオーナーと音楽事務所の代表は大学時代からの親友で、今回大学卒業後何処にも居場所が決まっていなかった皆人に、音楽事務所の代表が取り敢えず遊んでいるよりましだろうと声を掛けてくれたのだった。確かに皆人には何処にも居場所がなかった。
 
 大学時代皆人は、入部した軽音楽同好会の仲間と組んだバンド活動に明け暮れていた。そして運よく皆人のバンドは今回もお世話になった音楽事務所の代表の目に留まり、2年生の時にはプロのミュージシャンとして活動を始めていたのだった。
 
 2年生の時には全国の小さなライブハウスを回って演奏するツアーまで行った。確かに当時一部のコアなファンたちに支えられて、ライブ活動や音源販売そしてライブ配信と、それなりの成果を音楽事務所にもたらすことができていた。
 
 そんな活動が皆人が3年生になった頃には、様変わりしていたのだった。理由は明白だった。バンドが演奏する楽曲の全てを提供していた皆人が、新曲を1曲も創ることが出来なくなっていたのだった。それこそ眠れぬ夜を毎日のように繰り返して夜遅くまで、ギターを手にしてメロディ創りに没頭した。
 
 しかし皆人歌詞を創作する時に使っていた大学ノートには、白紙のページだけが残されていた。たまに数行言葉が書き殴らているページもあったが、それも全て数行で終わっていた。詩もメロディも創り出せない皆人は、最終的に自分的には認めたくなかったがメンタルがやられる一歩手前まで行きついてしまったのだ。
 
 そんな皆人にバンドの他のメンバーたちは、プロとして活動を続けるより、アマティアという立場で音楽を楽しんで行こうと話を切り出してきた。勿論最後まで折角プロのミュージシャンになれたのだから、もう少しだけバンド活動を続けていきたいと皆人は言い続けた・・・。


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小説短編集 【65】何故君はキャロルキングが好きなの(原稿用紙30枚)


※啓樹が咲奈と親しく話すようになったのは、高校3年で同じクラスになってからだった。学校帰りに咲奈のイヤホンのコードが外れカバンの中から音楽が流れだしたのを、たまたま後ろを歩いていた啓樹が咲奈に教えてあげたのが全ての始まりだった。
 
 その日咲奈が聴いていた楽曲はキャロルキングの《君の友だち》だった。それこそ1970年代の楽曲だったが、その楽曲を啓樹が知っていたのには訳があった。3年前当時中学3年生だった啓樹のクラスは、イジメ問題が表面化していた。そんな時にクラスの担任でもあった音楽の先生が、クラスメイト全員の前で何度も歌ってくれた楽曲がキャロルキングの《君の友だち》だった。
 
 そんな訳ありの楽曲を高校3年生の咲奈が聴いていたことにも理由があった。そしてそのことを啓樹が知ることとなる経過において2人は、互いが抱え込んでいた事情と互いに寄り添いながら向き合うこととなって行くのだった。高校最後の夏休みを前にしていた啓樹と咲奈にとって、この夏休みには一生忘れることのない風景が拡がっていたことだけは間違いなかった・・・。


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