オリジナル小説 【俺は今でも25or6to4】(第9回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(245作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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『病院に行かなくて本当に大丈夫・・・?』
啓治は美帆にもう一度だけ、病院に行くようにと声を掛けた。
『・・・』
『大丈夫・・・?』
もう一度少し大きな声で美帆に話しかけてみたが、美帆は部屋の入口で倒れ込んだままで震えていた。
『美帆、本当に大丈夫?』
足下に倒れ込んだままで身動き一つしなくなっていた美帆のおでこに、啓治は右手をそっと押し当てた。さっき事務所で感じた美帆の額の熱は明らかに更に熱くなっていた。きっと美帆は自分のアパートに辿り着いたので、一安心して気が抜けてしまったのだろう。啓治は美帆の身体を抱き上げて、部屋の中にあるベッドの中に美帆の身体を滑り込ませた。取り敢えず啓治はポケットに突っ込んでいた小さなタオルを出して、洗面所で水道水を十分に含ませた。啓治は水に濡れたタオルを美帆の額の上にそっと置いた。相変わらず美帆は目を覚まさなかった。啓治は洗面所にあった洗面器に水道水を目一杯汲んで、何度も熱をもったタオルを冷やしては美帆の額の上に置いた。冷たいタオルのお蔭だろうか、美帆の額の温かさは次第に下がって来ている様に啓治には感じられた。取り敢えず美帆が目を覚ますまで、タオルを頻繁に取り換えてあげようと啓治は考えた。静まり返った美帆の部屋の中で、美帆の小さな寝息だけが啓治の耳元に届いて来ていた。美帆のベッドサイドにある目覚まし時計の針は、夜中の1時過ぎを示していた。何度も洗面器の水を取り替えながら、啓治はずっと美帆の額に冷めたタオルを乗せ続けた。美帆の小さな寝息しか聞こえてこない部屋の中で、啓治は美帆がそれなりに落ち着いて来ていることに一安心していた。緊張感から解き放たれた啓治は、余計な事をぼんやりと考え始めていた。22歳の啓治にはこうして女の子が独りで住んでいる部屋の中に入ることは、生まれて初めてのことであった。そう言えば啓治が倒れ掛かった美帆の身体を偶然抱きしめた時に感じた美帆の身体の柔らかさは、今でも啓治の身体全体に忘れられないものとして残っているようだった。22歳の啓治がやっと間接的に体験した女の子の身体は、何と同じ劇団で裏方のスタッフとして共に働いていた美帆だった。そんな不謹慎なことを考えていた啓治は、いきなり強い眠気に襲われ始めていた。
『啓治!』
重たい瞼を押し上げると、啓治の目の中に朝の眩しい光が飛び込んで来た。ぼんやりと啓治が送った目線の先で、美帆がベッドの中から啓治を見つめていた。
『あれ、俺眠ってしまったのかな・・・』
『啓治、一晩中ずっとそのタオルで私の頭を冷やしてくれていたの・・・?』
啓治は手にしていたタオルを慌てて洗面器の中に放り込んだ。
『どう、熱の方は・・・?』
『ありがとう。お蔭様で随分と楽になったわ。それにしてもどうして啓治がここにいるの?私昨夜のことを全く覚えていないのよ』
『事務所にいた時からもう熱があったので2人でタクシーをつかまえてここまで帰って来たけど、美帆がアパートに着いた途端安心したせいか倒れ込んじゃったので・・・』
『それで啓治が一晩中ここにいて、私の熱をそのタオルで冷ましてくれていたのね。本当にありがとう!啓治はもうそろそろ事務所の方に行かなければならないわね。寝不足のようだけど大丈夫かしら?』
美帆にそう言われて慌てて啓治はベッド横の目覚まし時計で時間を確認した。確かにもう事務所に向かわないと遅刻する時間になっていた。
『もう大丈夫・・・?』
『大丈夫よ、ありがとう!それより私のせいで今日1日寝不足で、しんどいでしょう』
『寝不足は毎日のことだから、心配いらないよ。帰りに必要な物があったら買って来るけど?』
『大丈夫、ありがとう!それより、本当に事務所に遅れるわよ。駅までの道は分かるかしら、とにかくアパートを出たら右に真っ直ぐ進んで行けば5分位で駅前に出るから!』
『美帆が今日1日休むことは俺の方から駒井さんに伝えておくから、それじゃ!』
啓治は一言そう言い残して美帆の部屋を出て行った。
『お願い、行ってらっしゃい!』


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円

【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの
【66】メッセージボードのある駅


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