オリジナル小説 【俺は今でも25or6to4】(第2回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(240作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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啓治みたいに進路未定と言うのが1名でもいることは教授にとっては避けたい状況に違いなかった。
『本来ならもっと早くにいやそもそも大学へ進学した時から自分の将来については、真剣に考えてそれなりの結論を出して先へ進んでいるべきだったでしょう』
『・・・』
啓治に教授に返すべき言葉なかった。だが決して卑屈になど啓治はなっていなかった。

『小久保君も当然知っているとは思いますが、今の社会では大学卒業時しか新卒採用のチャンスはありません。しかもこの時期に就職活動をして希望する会社からの内定を取りつけておかないと、卒業後にそれなりの会社に就職することは難しいでしょう。11月1日は内定者の拘束入社試験が予定されています。入社試験を受けると言うことは、学生側からのその会社に入社するという意思表示です。従って最悪でもぎりぎり10月末までに内定を取得しておく必要があります。それだけはくれぐれも理解しておいて下さい。最後に卒業論文の方はどうでしょうか、何かアドバイスが必要であるのなら相談にのりますよ』

『卒業論文は、もう仕上がっています。アドバイスは必要ありません』
『まあ、何か卒業後の進路について具体的な事が決まったら報告をして下さい』
『ありがとうございました』

啓治は教授に報告するともしないとも言わないまま教授室を後にした。
大学を出て商店街を通り抜けて、啓治は駅に入り上りのホームに降りて行った。電車がホームに入ってくるまで、啓治は教授との話の内容を思い返していた。確かに教授の言う通りだった。

大学4年生にになっていよいよ社会に出る間際になって、不意に立ち止まっているなんてあまりにも行き当たりばったりのように啓治にも今更ながら思えてならなかった。しかし周囲から如何言われようとも、それが現実なのだから仕方ない。

反対側の下りのホームに啓治の両親と同世代の夫婦がベンチに腰掛けている。鹿児島の両親からも大学卒業後の予定について、早く連絡をよこすように催促されていた。啓治はまだ鹿児島に帰るとも帰らないとも伝えていなかった。母親には特段の想い入れは無いと思われたが、父親についてはそうはいかない。

何しろ父親はそもそも地元の大学進学を啓治に勧めていたし、最悪九州内の大学への進学するようにと拘っていた。ところが啓治は福岡や大阪を飛び越して、東京の大学へ進学してしまった。父親は大いに不満だったが、啓治が東京の大学しか受験しなかったので止むを得ずその大学への進学を受け入れた。

だが啓治がいよいよ東京に向かって行く時にも、父親からは大学卒業後は鹿児島に戻って地元の会社に就職してやがては父親のスーパー経営を引き継いで欲しいと釘を刺されていた。従って啓治の承知していない世界で、啓治の将来は決まっていたのかもしれなかった。

それでも啓治は東京に出て来た時から、父親の思惑通りに歩んで行くことは念頭に無かった。啓治は幼稚園入学から高校生卒業まで、両親や担任の先生から手の掛からない子供と言われ続けて来た。特別啓治がそうなろうと意識して来た訳ではなかった。

周囲いた同級生たちの動向を冷静に見つめて、彼等との距離感だけを間違わないように先へ進んで来ていただけだった。そしてある意味大学生になって、啓治は生まれて初めて精神的な独り暮らしを体験していた。四畳半の下宿に半間の押入れと小さな流し場とガスコンロが1つだけの空間だったが、啓治の前にはとても広い世界が拡がっていた。

父親には申し訳なかったが、啓治にはこの狭くて広い空間を手放すことなど考えられない事だった。更に大学生活の4年間で、啓治は日常生活の自由な光景が当たり前の様に手に入る環境を大学卒業後も継続させたいと思うようになっていた。

ただそれを手に入れる具体的な形が、啓治には見えていなかった。啓治は狭い四畳半の下宿の中で、唯一の高級品であったミニステレオコンポでレコードやFM放送を聴くことが唯一の趣味だった。大学生の4年間も下宿近くのレコード店でずっとアルバイトをしていた。

理由は試聴用のレコードが手に入ると言う利点があったからだった。音楽が大好きだった啓治だが、音楽的素養など何一つなかった。プラットホームに立ったまま頭の中で取り留めもない事を考えていたら、啓治の目の前に上り電車が滑り込んで来た。

日中の電車の中は空いていたが、いつもの様に車窓に流れる外の景色を眺めるためにドアの所で進行方向に向かって啓治は立っていた。ドアのガラス越しに見える景色は、いつもと変わりは無かった。次の駅に停まる時、啓治の目に大きな映画のポスターが映って来た。


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの


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