★1月14(日)、下記作品が無料購読できます | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(271作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

★Kindle 本 小説(amazon)販売中!

※Kindle 本 小説(amazon)販売中!

★1月14(日)、下記作品が無料購読できます

小説短編集【54】フラガールのいた夏(原稿用紙30枚)


※啓樹が音響エンジニアを目指して専門学校へ入学してから早くも2年が経とうとしていた。高校時代啓樹は、大好きなロックバンドのライブ会場やコンサートホールに通った。そのチケット代を捻出するために、高校入学した時から啓樹はアルバイトを始めていた。
 
 もともと引っ込み思案な性格だった啓樹は自身で音楽に挑戦してみようとは考えずに、素敵なコンサートなどの演奏を盛り上げる裏方の仕事に気が付いた時には興味を持つようになっていた。そんな啓樹は高校卒業後迷わず音響エンジニアになるために、2年の音楽専門学校へ入学した。20歳になっていた啓樹の2年前のことだった。
 
 いよいよ卒業の時が迫ってきていた啓樹は、卒業後の進路について考えるようになっていた。それこそ2年前のライブ会場で目にしていた音響エンジアの仕事がしたくて専門学校へ入学したが、啓樹は音響エンジアの活躍場所が多岐に渡っていることを知った。
 
 実際音響を必要とする場所は、コンサート会場以外にも結婚式場、セレモニーやパーティ会場など数多くあった。だができれば専門学校卒業後は、すぐにでもコンサート会場での音響エンジニアとして活躍できる環境を啓樹は希望していた。
 
 専門学校の同級生たちの中には放送局などで働くことを選択している仲間もいたが、啓樹はコンサート会場での音響関連の仕事がメインの音響会社で働くことに拘った。理由ははっきりしていた。啓樹自身がコンサート会場で流れ出てくる音源に身体全体で反応している瞬間が、一番居心地よかったからだった。
 
 そんな啓樹は専門学校2年目から音響会社で長い休みにはアルバイトをし始めていた。正直外から漠然と眺めていたの違って、具体的に音響会社で働いている環境に身を置いてみて啓樹は多くのことを知ることとなった。それは学校卒業後すぐにコンサート会場で音響エンジニアとしての仕事に携われることは、難しいと言うことだった。運よく関われたとしてもアシスタントとして、長い間力仕事ばかりの下働きを経験することが当たり前だった。
 
 まあ確かに音響エンジニアとしての仕事に就こうとしている人の数は、啓樹が思う以上の数だったに違いなかった。そんな厳しい現実を目にしても、啓樹の音響会社で働こうとという気持ちが変わることは無かった。啓樹が身体全体で音楽を感じた原体験が、啓樹の背中を強く押してくれていたのだった・・・。


54000000000.jpeg

小説短編集 【55】消えないグラフィティ(原稿用紙30枚)


※高校生活最後の夏休み、悠里はブルーな気分に包み込まれていた。それと言うのも高校卒業後の進路について、いよいよ両親と対立しなければならない時間が迫ってきているからだった。正直悠里の方には話し合いの余地など見当たらなかった。

 それと言うのも悠里が美術大学への進学を希望していたのに対して、父親は高校卒業後専門学校で教職課程を履修して幼稚園教諭免許を取得して欲しいと考えていたのだ。悠里の実家は祖父母の時代から続く幼稚園を営んでいた。

 今でも祖父母は理事長として幼稚園の運営に携わっていたが、悠里の父親と言えば数年前から市議会議員としての活動の方が忙しくなっていた。母親は中学校で教員をしていたので、結果的には高齢な祖父母の2人が力を合わせて何とか運営していたのだった。

 悠里は自分に早く幼稚園教諭免許を取得して幼稚園の経営に携わるように求めている父親に、自分こそ市議会議員活動などに専念せずに幼稚園の経営に関わるべきだと考えていた。勿論、そんな自分の考えも父親に伝えて来ていた。

 悠里に父親は子供には分からないかもしれないが、市議会議員の活動も幼稚園の安定した運営に貢献しているのだと言い張った。正直悠里には全く理解できなかった。何故なら父親の話には、具体的な説明が一切なかったからだった。

 そんなブルーな悠里が最近一番心を弾ませて向き合っていたことがあった。それは高校生活3年間の美術部の活動で、休日の部活動の日に下校時に常に顔を出していたお好み焼き屋さんからの面白い依頼だった。それはお好み焼き屋の壁が淋しいので、ストリートアートの場所として活用して欲しいということだった。

 それこそ悠里は以前から街中を歩いていて、時折空き家のシャッターや壁に見事なエアロゾールアートが描かれていたのを目にしていた。それまでスケッチブックやキャンバスと向き合ってきていた悠里にとって、お好み焼き屋さんの壁に好きな画を描けるなんて心躍る気分に包み込まれていた・・・。


5500000000.jpeg