いつもご訪問頂き、ありがとうございます。

 

プレネタデートからこっち、この前の続きを書こうとしたのですが、あまり楽しい記事が書けず、体調を崩したのもあって、キリのいいところでいったん休憩することにしました。

代わりと言っちゃなんですが、かねてから書きたかった紫織にスポットを当てることにしました。

いやいや別に彼女の記事なんて読みたくなんかなかったよ…なんておっしゃらず、懲りずに訪問頂きました皆様、ありがとうございましたm(__)m

お楽しみいただけましたでしょうか。

 

この続きは、いつになるかわかりませんが、また時間とアイディアができましたら、またチャレンジしたいと思います。

その時はまたお付き合い頂けましたら幸いです。

 

ありがとうございました。(^^)/

 

50巻を待ちわびている まみい 拝

つづきです↓

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・なぜ紫織を専門医に診せないの?

 

コミックス48~49巻の紫織の狂気発症シーンで、「なんで紫織を専門医に診せないの?」と感じた方も多いでしょう。

真澄が自宅に戻り紫織の病状を調べようとググっていたのは、彼女の家族が(回復を)諦めたかのような態度をとっているからでしはないでしょうか。そんな真澄を後目に、鷹宮翁は、「どんな治療があるというのかね。紫織は心の病ぞ」と言って紫織を専門医には診せず放置しています。単に、孫可愛さのあまりそうしたかっただけなのか、単純に作者がご都合主義的な路線を選んでいるのか、どうも分かり辛いのですよね。

 

いやいや爺さん、ホステス扱いした挙句、こんなひどい状態にした腰抜け男を婿になんかしたら、可愛い孫娘は治るどころか病気がよけいに悪くなっちゃうんじゃ、、、とツッコミたくなるところです。突然に破談をいいわたさされ、愛しい孫娘が正気を失っているというのに、それでも尚その孫と、真澄を結婚させようとしている鷹宮翁の態度はどうも不自然です。全財産をなげうってまで、紫織と結婚してくれと真澄に頼み込むエピソードは、いくら物語的に真澄を追い詰めるためとはいえ、ちょっと強引な展開に見えなくもないです。

 

・鷹宮翁は何を恐れているのか

 

狂気に堕ちた紫織は紫のバラを移動させようとした看護師に刃物をつきたて、負傷させています。紫織の手から鋏をとりあげようとした真澄に、翁は「紫織は病人なんだぞ。手荒な真似はわしが許さん」と言って庇うばかりか、「わかった紫織、紫のバラをおまえの望むだけもってきてあげよう。だからその鋏をおきなさい。おまえのいうことならなんでもきいてやるぞ」と、まるでご機嫌をとるかのような言い方でなだめています。その言葉を聞いた紫織は安心したのか鋏を離し、再びバラをむしり始めます。

 

その後、翁は真澄に再び縁談継続をもちかけています。「条件があるならなんでもきこう」とさえ言っているのです。つまり彼は、紫織を回復させるための前向きな動きをとらずに、真澄を説得する事を優先しているのです。孫娘かわいさあまりになりふり構わなくなっているお祖父ちゃんの姿に見えなくもないですが、病気の紫織から病気の原因を作った張本人を遠ざけることもせず治療もしないとは、ちょっと常識を欠きすぎてはいないでしょうか。(もともとこの一家に常識など存在していないのかもしれませんが)

 

しかも、彼は天皇とあだ名されるほどの人物なのです。その彼が、真澄を前にして膝をつき頭を下げてるなんて…しかも彼は「紫織を正気に戻せるのは君しかいない」とまで言っている。どんな病かも知ろうともせず、真澄が破談を申し入れた理由を訊きだそうともせず、単純に真澄と結婚しさえすれば紫織は回復すると信じているなんて、大企業グループの代表にしてはあまりにも考えが浅はかすぎるのではないでしょうか?

 

まあこのシーンは50巻以降につながる何かのフラグかもしれませんが、このコマだけ取り上げれば、英介が酒のグラスを片手に「真澄もやりおるわ…!」と言いながら声たからかに笑っているシーンと明らかに対照を成しています。勝負に勝ったのは英介で、負けが込んでいるのは鷹宮家、といった具合です。

 

いったい鷹宮翁は何を恐れていたのでしょうか。彼は、単に孫娘を愛する耄碌しかかったただの爺さんなのでしょうか?

 

・鷹宮翁は紫織の心変わりを恐れていた?

 

ではここで鷹宮翁が、紫織の治療を後回しにしてまで真澄と紫織を結婚させようとしたのか、その理由を考えてみましょう。

紫織は鷹宮家の跡取り娘で、”よき婿”を迎える義務がありますから、真澄から拒絶されている今、メンヘラの噂などがたってしまっては、今後役割が果たせなくなってしまう可能性があります。真澄が破談を言い出した今、正気に戻れば、紫織は「真澄とはもう結婚したくない」と言い出すかもしれない。鷹宮側が英介に何か弱みを握られいるとしたら、翁としてはそんな事態はどうしても避けたかったことでしょう。そうなる前に、彼は、紫織が正気を失っている今こそ好機とばかりに、一刻も早くこの二人を入籍させようとしたのかもしれません。

 

・真澄に知られたくない”何か”を紫織は知っていた?

 

鷹宮翁と英介との間にどんな裏取引があったのか、49巻時点では全く描かれていません。英介と翁との密約は、真澄が知らない、または知られたくない可能性もあります。真澄が子供の頃、誘拐された事件に鷹宮家がからんでいた、といった二次小説のエピソードを拝読したことがありすが、もしそういった(真澄に知られてはマズい)内容の”秘密”が存在していたとしたら、真澄にとって鷹宮翁は、身内(味方)どころか敵となってしまう可能性があります。ひょっとしたら、そういった真澄に知られたくない類の”秘密”を紫織が知っていた可能性があったんじゃないでしょうか。真澄から拒絶された今、紫織が正気に戻れば、それを真澄にぶちまけてしまう可能性があったのかもしれません。

 

・「みんな嘘つきだもの」

 

この紫織の狂気エピソードで、紫織は興味深いセリフをつぶやいています。「鋏を置きなさい」と命じる祖父に紫織は一言「いやよ みんな嘘つきだもの」と言って拒絶しているのです。翁は弁解するかのように「嘘はつかない おまえの言う事なら何でもきいてやるぞ」と諭しています。

確かに真澄は紫織に対して嘘つきです。しかし紫織は「みんな嘘つき」と言っているのです。つまり彼女は”真澄以外にも嘘つきがいる”と言いたいのです。その孫に祖父は「嘘などつかない」と答えている。

 

わたしにはこの祖父こそが紫織に嘘をつき続けてきた張本人のように見えます。彼は真澄になぜ紫織との結婚をやめたくなったのか、その事情を知ろうともせず、「条件」だけで紫織との結婚を再び進めようとする人の心に非常に無頓着な人間ですので、真澄の心を勝手に推測して「速水真澄はお前の事を愛しているのだ。なぜならお前と結婚すれば彼は鷹宮グループのトップになれるからだ」と、孫娘に言い続けてきたのかもしれません。

ところが真澄から「あなたの事を幸せにできない」と宣言されて、祖父の言葉が全くの嘘だった事が露呈してしまった。そればかりでなく彼は、紫織と結婚できない理由として「幸せになるために、馬鹿な事をしたくなった」とさえ言ったのです。祖父の言葉が嘘だったばかりでなく、紫織との結婚=真澄の幸せ、と信じてきた大前提が壊れてしまった。これまで全幅の信頼を寄せていた祖父の言葉が崩壊し、彼女は何を信じてよいかわからなくなってしまったのではないでしょうか。

 

・お金で幸せが買える世界は存在するのか

 

姫川亜弓は生まれつき美貌の持ち主でありながらも努力家で才能もありますが、彼女自身、金持ちの家に生まれなければ英才教育を受けることはできず、バレエや舞踊でならした美しい演技力を身に付ける事はできませんでした。しかしマヤは貧乏な状態から、紫のバラの人の援助があったとはいえ、才能一つで現在の地位に上り詰めています。教会や地下劇場、高校の体育倉庫…、お金をかけずに努力と工夫と情熱で高い演技力を身に着けてきました。

 

対して紫織は、体が弱いことを理由に努力をしない代わりに、地位や財産で真澄との婚約を果たしたように、お金で”幸せ”と呼ばれているものを手に入れてきたため、真澄の言うように「星空に対する価値観が違うから、あなたとは幸せになれない」と言って、将来の出世を棒に振ろうとする彼の気持ちが理解できないのだと思われます。

「意味わかっておっしゃっていますの…?真澄さま。わたくしとの結婚を取り止めるということは、今、鷹宮グループと進めている大型プロジェクトの企画も取り止めるということですわよ…!役員として経営陣への参加も…将来約束されているトップの座も…!なぜですの…目の前にある成功と出世を棒にふってまで…なぜ…!?」

このセリフに象徴されるように、彼女はマヤのように”お金で幸せを買う”事のしない人間の気持ちが分からないのかもしれません。

そういった価値観に触れずに生きてきたため、”そうでない場合”どうやって対処すればいいか、わからず行き詰ってしまったのではないでしょうか。

 

・「ガラかめ」のテーマ

 

配偶者の持ち物で結婚相手を決める人はいるでしょう。むしろそういった人の方が多いのかもしれません。マヤの母親の北島春や、真澄の母親の文の世界観では、幸せはお金で買うものだったのかもしれません。彼女たちがそんな風に考えたのは、決してそれは彼女たちが生きていた時代が昭和だったからではなく、スマホやネットが存在する現代でもその価値観は継続していて、むしろそれこそ「ガラスの仮面」の大きなテーマであり、マヤの才能が象徴するように、”お金で買えない幸せが存在する”事こそ、この物語の最大の魅力なのだとわたしは思います。

 

・50巻以降の紫織の姿

 

紫織ファン?の方には申し訳ないですが、演劇関係者でない紫織にこれ以上幅を利かせてほしくないのがわたしの本音です。(苦笑)50巻以降の登場は、なるべく遠慮いただきたいところですが、おそらく彼女の回復のカギとなるのが、マヤの「紅天女」なのだと思われます。紫織はマヤの事を”あんな少女”呼ばわりして見下していますが、そのマヤの絶世の美女を演じる姿を見て、初めてマヤの存在に圧倒され感銘を受ける…というのが、きっと締めを飾る物語の最後の大花火なのだとわたしは予想しています。

 

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<鷹宮紫織とは何者か?>おわり

 

これにて一旦終了です!

 

つづきです↓

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真澄を獲得する事をただひたすら望み、彼と結婚できれば幸せになれると突っ走ってしまった紫織。なぜ彼女は焦る心を止められなかったのでしょう?なぜ誰も彼女に、速水真澄はあなたを愛していないのだから結婚しない方がよい、と諭さなかったのでしょうか?と同時に、紫織は自分を好いていない男との結婚をここまで望むのか、という疑問も大きく感じさせます。聡明だった紫織がなぜそこまで真澄との結婚を望んでしまったのでしょうか。

 

聡明だったご令嬢が豹変

 

登場当初、少なくとも紫織は真澄の言う「聡明」な女性に描かれていました。真澄の心が自分にはない事に気づいていましたし、真澄が頻繁にデートに誘ってくれるのも「お義父さまにおっしゃられてお礼にこうしてわたしをデートにさそってくださったのでしょう?」と、真澄の心の内を見透かすような聡いコメントをしています。また、マヤの「狼少女ジェーン」の演技を観て、「演技に一途」と称賛し「真澄が大都芸能の社長として興味があるのもわかる」と認めているので、物語後半で見られるような短絡的な考え方をする人物ではなかったように見受けられます。どこから彼女は変わってしまったのでしょうか?

 

・紫織は真澄の伊豆の別荘突撃攻撃からおかしくなっている

 

紫織は真澄の伊豆の別荘を三回訪問しています。うち二回は真澄在宅時で、アポイントなしの突撃訪問です。(三度目は別荘番に嘘をついて無断で上がり込み、ついでに勝手に本棚をあさっている)伊豆の別荘は真澄がひとりになって、マヤの事を考えたりするのに使われている場所でしたので、これらの訪問はその紫のバラの人とマヤの聖地のような所に、紫織が土足で上がり込んでいるような印象を読者に与えています。また真澄が、紫織を「歓迎します」と言って優しく出迎えているのも、癪に障るところです。

 

二度目の訪問は、玄関から入らずテラスからずかずかと入ってくる様子が描かれています。呼び鈴を鳴らしても返事がなかったからと言っていますが、返事がない他人の家に許可なく入っていっては不法侵入になってしまいますが、彼女は一行に気にしていません。(彼女の辞書には”親しき仲にも礼儀あり”という言葉はない模様)考え事をしていたと言う真澄に「またお仕事のことですの」と彼女はツッこんでいます。

 

紫織は「なんでいつも仕事のことばかり」と真澄の言い訳に不満をもっているようですが、プライベートな時間にプライベートな場所にいれば、プライベートな事を考えるのは当たり前。「いやあ、北島マヤの事を考えていたんですよ。彼女が他の男のものになってしまったら俺は気がくるうかもしれないと考えていました」と、テラスからいきなり入ってきた人間に打ち明けるでしょうか?

 

好きな男性の気持ちを知りたい気持ちは分かりますが、唐突に相手のプライベートに乗り込んできて本音を訊きだそうなどと、ちょっと調子がよすぎではないでしょうか。この時の紫織に慎ましさや聡明さは見られず、感じられるのは押しの強さと遠慮のなさ、そして計算高さだけのように思われます。

 

・脅しをかける紫織の泣き落とし大作戦

 

どうやら紫織は真澄から結婚申し込みの返事を聞きたくてやってきたようです。鷹宮家からは(OKの)返事をしているのに仲人から速水家からはまだもらっていないのはなぜかと、紫織は真澄に詰め寄ります。「真澄様はわたしがお嫌いですか?」「他にどなたか好きな方がいらっしゃいますの」と、尋ねる紫織に、真澄は「そんな事はありません。あなたはすてきな方ですよ」と答えます。しかし紫織は「ではなぜ(OK)の返事をしてくださいませんの」と言って、引き下がろうとしません。そして最後にトドメのような一言を発するのです。「紫織は…真澄さまが好きです…」と。

 

前にも書きましたが立場も利害関係のないフラットな出会った男女ならいざしらず、権力者の鷹宮家に「紫織の事が好きでない」「他に好きな人がいる」などと口が裂けても言えるわけがありません。真澄は返事ができずに青くなっています。紫織が窓を背にした真澄の胸に手をあてている場面が描かれていますが、この画が示す通り、紫織が真澄を後のないところまで追い込んでいる事を表現しているものと思われます。

 

(因みにこの時マヤは梅の里で絶賛「紅天女」の稽古の真っ最中。真澄が絶体絶命の大ピンチだというのに、下手クソな風の演技にかまけている場合じゃないのでは…)

 

・真澄に送ってもらうのも計算のうち?


わたしは、この時の別荘突撃訪問から、鷹宮家による”速水真澄調略計画”が始まったのだと想像しています。”紫織の”ではなく”鷹宮家の”と書いたのは、一連の出来事に紫織ひとりで片づけることは不可能で、祖父の威光や両親の協力がなければ実行することが不可能な事が多々発生しているからです。

 

例えば、この別荘法訪問で真澄から「イエス」の返事をもらえなかった彼女は、泣きながら外に飛び出しています。もし彼女が、最初から真澄が「イエス」と返答しない場合があって、その言葉を受け入れる覚悟が出来ていたなら、涙など見せずにに「あなたのお気持ちはわかりました」と言って、(慎ましい女性に相応しく)大人しく帰っていくはずです。しかし彼女は(あてつけがましく)泣いたうえ「あなたは困ってらっしゃるのですね…まるで断りの言葉を探していらっしゃるよう…」と、恨み節を残し飛び出してしまいました。こう言えば、真澄が「あなたのおっしゃる通りです。わたしはあなたとは結婚できません」と面と向かって断る事ができないのは(聡明な彼女なら)分かっていたでしょうし、紫織が泣くことによって、「イエス」と言わない真澄に罪悪感を抱かせるのにも成功するわけです。

 

真澄はこの後、バーでひとり飲みながら「あのあと泣き続ける彼女を追いかけて無理に家まで送ったが」と、独白していますので、車で帰る彼女を追いかけて彼は敢えて自分で彼女を家に送り届けたようです。彼の責任感だったのかもしれませんが、彼女が泣くことによって彼女の祖父からどんなに責められるかわかっていたからでしょう。

 

真澄の事を本当に愛しているのなら、彼の気持ちを察した時点で、自ら破談を申し出るべきでしょう。祖父の不興を買えば真澄の立場が危ういことぐらい彼女とてわかるはずです。愛している人が窮地に陥らない様、自分は速水真澄など好きではない、好みではないのだと、結婚したくないと、祖父にそう言うべきではなかったでしょうか。

 

しかし紫織はそうしませんでした。彼女は自分の意思を押し通した結果、真澄からプロポーズさせることに成功させています。愛する孫娘が真澄に泣かされたことを祖父に知らせたらどうなるか、彼女は分かっていたかのような展開です。ここに祖父の強力な協力が存在します。今まで”病気”で真澄の気を惹いていたわけですが、それが効かないと分かり、”お祖父ちゃんに言いつけてやる”の泣き落としの技をつかう事にしたんじゃないでしょうか。これは自分の背後に聳える祖父の威光が存在しなければできない技です。

 

・マヤへの濡れ衣事件は家族ぐるみの大作戦

 

鷹宮側の協力者は、紫織の祖父だけではありませんでした。物語後半で真澄は紫織の悪行をレストランで指摘し、あたかも彼女ひとりの犯行であるかのように責めていますが、彼女の犯した罪のすべては紫織ひとりのものではなく、そもそもいたるところに、家族や縁者の介入が見え隠れていました。

 

紫織は、真澄がマヤの紫のバラの人である事を知って、マヤに濡れ衣事件(指輪盗難、花嫁衣裳汚染)をでっち上げています。ここで多くの紫織お抱えのエキストラが登場します。婚約指輪を自分の手から抜いてマヤのバッグに隠したのは紫織自身の所業ですが、マヤのバッグを無理やりマヤに持たせて床に落とさせるようにしむけ、紫織の下手?な演技でマヤが紫織に悪意のある行為をしたといきなり決めつけたのは、ブライダルサロンの従業員です。

 

確かにマヤのバッグから指輪が出てきましたし、空になったグラスをマヤがもっていたので、いかにもマヤが紫織にジュースを浴びせたかのように見えますが、たとえ紫織がギャン泣きしていたとしても、故意かどうかはこれだけではわかりません。犯行現場にいなかった人間が、いきなりマヤを犯人認定するのは不自然でしょう。(水城は真澄に”現場を目撃なさったのだから信じないわけにはいきませんわよね”と言っていますが、真澄もその場に居合わせてはいなかった)おそらくここは、紫織や紫織の家族が懇意にしている、顔の利くサロンだと思われます。また、その後マヤに真澄との手切れ金を意味する小切手を黒沼とマヤの元に持ってきたのは、紫織の世話人の滝川という老婦人で、その小切手の振出人は”鷹宮慶一郎”となっています。おそらく、紫織の父親でしょう。

 

つまりここまで「祖父」以外に、「サロンの従業員」「世話人の滝川」「父親」がこの一連の事件にかかわっている事が分かります。(おそらく真澄を港に送り届けた運転手も一味)となれば、紫織が真澄に手渡したアストリア号のワンナイトクルーズのチケットを贈ったのは誰か容易に想像つくはずです。チケットにはしっかり「鷹宮汽船」と書かれてありますから、家族ぐるみで真澄から真澄のお気に入り女優である北島マヤを遠ざけ、紫織と真澄を強引にベッ〇インさせようとした意思が、強烈に感じられます。結婚式は一か月後にせまっているのですから、本来は何も焦る必要はなかったのに、早々に”既成事実”に持ち込みたかったのは、紫織だけでなく鷹宮側に何か理由があったからではないでしょうか。

 

(余談ですが、ウェディングドレスを着た女性と会った人ならわかると思いますが、あれだけ裾の広いスカートを身に着けていると、他者は半径1メートルは近づけないのです。1メートル以上離れているマヤの持っているグラスのジュースで紫織のドレスを汚そうと思ったら、突進するように倒れなければなりませんが、その際、ぶつかった瞬間汚れるのはマヤの服の方だと思われます。紫織の衣装も汚れるかもしれませんが、グラスを持っている状態で目の前の人間が倒れかかってこられれば、いくら天然のマヤでも、無意識的にグラスを自分側に引き寄せるはずですので、汚れ方はマヤの方が酷くなるはずです。紫織は衣装の下に血のり?でもしこんでいたのでしょうか?めちゃくちゃ不思議な場面でしたけど、紫織は無尽蔵にお金があって、花嫁衣裳の二枚や三枚いくらでも作ることができるのですから、大泣きするほどのことはないですよねえ。マヤはさやかからもらったお下がりの服を大事に着ていると思いますので、マヤの服の方が汚れずに済んでよかったと思いました☆)

 

・紫織と真澄との結婚を一番に望んでいたのは誰なのか?

 

そもそも紫織と真澄との結婚を一番望んでいたのは誰なのでしょう?わたしは、真澄の義父の英介だと思っています。この縁談を最初に考えだしたのは真澄の義父の速水英介で、英介から鷹宮側に申し入れたようですが、なぜ鷹宮側は成金の格下でしかもどこの馬の骨ともわからない養子の真澄と、たったひとりの可愛い孫娘との縁談を了解したのでしょうか?

 

ここで紫織だけでなく、紫織の両親や家族らがそこまで真澄に執着する必要があったのか考えてみたいと思います。わたしは、英介が鷹宮家が外に知られたくないような秘密や、弱点を知っていて、それを盾に息子の真澄と紫織との縁談をまとめようとしたのだと考えています。鷹宮もそんな事をされては困ると、紫織がOKさえ出せば纏まる予定の話だったのかもしれません。しかしいくら紫織が英介の思惑通りに真澄にぞっこんだったとしても、肝心の真澄が首を縦に振らないとなると、英介に弱点を握られている鷹宮翁は困るわけです。

 

紫織は、真澄がなかなか自分の気持ちに寄り添ってくれない、という不満を常日頃、つらつらと家族に相談、もしくは愚痴っていたのではないでしょうか。鷹宮側が大都に弱みを握られていたというわたしの仮定が正しければ、煮え切らない真澄の態度に「いつ婚約破棄を言い出されるか分かったものではない…」と、鷹宮翁は非常に不安に感じていたのかもしれません。

 

真澄の気持ちを紫織の言葉越しに知った家族たちは、一日も早く”身内”なってもらうしか道はないと考えるようになった。真澄が身内にさえなってしまえば、真澄も”同じ穴の狢”だからです。故に彼らは、紫織に彼は本当はお前の事を惚れているのだ、お前が本気をみせれば、きっと彼も態度を改めて好意を示してくれるだろうと、そうある事ないこと言い聞かせた。そして、強引にワンナイトクルーズの船を用意して、既成事実を作ろうと画策したのではないでしょうか。

 

世間知らずで、男性と付き合ったことのない、ましてアラサーの結婚に焦った彼女なら、(真澄が紫織を愛していないかもしれないという)不都合な事実に蓋をして、あっさり祖父の言う事を信じてしまったのかもしれません。紫織は祖父の言う通りに、派手に泣き落とそうとしましたし、仮病などありとあらゆる手をつかって真澄の気を惹きました。作戦通り、真澄は鷹宮側のシナリオ通りに紫織にプロポーズしてしまったので、紫織は祖父の言葉を信じてしまったのでしょう。おそらく真澄はマヤとの事がなければ承諾しなかったでしょうし(そもそもお見合いそのものもしなかった)、すすんで結婚するつもりもなかったはずで、全てが紫織側の思惑通りだったわけではありませんが、真澄からのプロポーズを祖父達の助言通り愛の告白だと勘違いしてしまった紫織は、「わたしは真澄様から好かれていない」という認識がどこかに吹き飛んでしまい「真澄様は私の事を愛している」と、激しく思い込んでしまったのではないでしょうか。

 

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つづく

つづきです↓

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実は紫織は、聡明でもなく、優しくもなく、美しくもない女性である理由を長々と書いてきましたが、紫織ファン?のために、彼女に同情すべき点がないかどうか見てみましょう

 

紫織と真澄は結婚式はまだの段階でしたが、あれだけ派手な婚約パーティーを済ませているのですから、社会的に既に”結婚した者同士”と見做されて当然ですし、(真澄はともかく)紫織は殆ど妻になったつもりで新婚気分だったかもしれません。その”夫”から、突然結婚をやめようと態度を翻されてしまったのです。いわゆる成田離婚のようなものかもしれませんが、(お披露目を終えて)安心しきっていた彼女にとっては晴天の霹靂だったと思われます。

 

彼女は本当に命を絶つつもりで、化粧室に向かった…そういう設定だったのかも。真澄に最後に「アストリア号であのスィートルームはお使いになったの…?あの子とふたりで…」と尋ねたのは、自分が不貞された妻ではなかったという誇りを最後に感じたかった、ともとれます。死にきれなかった哀れな彼女でしたが、その後、正気を失ってしまったのは、追い詰められた精神が行き場を失ってしまったからでしょう。食事を摂ろうとしないのは、「生きていたくない」という心の叫びであり、この世のどこにも自分の身を置く場所がないからなもかもしれません。

 

・紫織は一縷の望みを持っているでは?

 

とはいっても、自〇騒ぎを起こした後の紫織は、絶望しているわりには珍妙な行動をとっています。彼女は正気を失っていながら、婚約者を奪った(と思い込んでいる)女性に対し非常に攻撃的になっているのです。バラをプチプチむしったり、花切鋏でバラを突き刺したり、お葬式と称して火事をおこしたり、バラを抱えて池に飛び込んだりと、やってることは一見合理的ではありませんが、ある目的をもって一途に行動しているように見えます。そこには、負けを認めた人特有の、弱さも諦めも虚無感もありません。わたしにはに彼女は真澄を諦めておらず、(マヤ排除のため)ものすごく情熱的?に活動しているように見えます。

 

「真澄様はわたしがきらい…わたしは紫のバラが大きらい…!散っておしまい…みんな…みんな…」紫のバラをマヤに見立てて花切狭で突き刺す彼女の心の底に、一体どんな思いがあるのでしょうか。「真澄様はわたしは嫌い」だけど「わたしは北島マヤをそれ以上に嫌い」なのだと言いたいのでしょうか。真澄様がわたしを嫌う以上に、私は北島マヤが”大”がつくほど嫌いなのだ。だからわたしが北島マヤを大嫌いだという意思表示をしつづければ、事態は打開するかもしれない…という意味なのではないでしょうか。(正気を保っていようが失っていようが)紫織の中で、まだ”試合”は終わっていないのかもひしれません。

 

・日本人の自〇の原因、一位は…

 

狂気に陥りながらも、マヤに対する憎悪を忘れられない紫織。何が彼女をそこまで駆り立てているのでしょうか?

 

コロナ蔓延のこの時勢で状況は変わってきているでしょうが、日本人の自〇の理由の一位は健康問題なんだそうです。紫織は、学生の頃は体育も見学していたぐらいですから、かなり長期間かつ頻繁にその症状に悩まされてきたものと思われます。おそらくそのせいで、体を動かして何かを達成したり、人と交際したりといった人並な人生経験も積むことができなかったんじゃないでしょうか。

 

そんな悩める乙女の目の前に、若くてハンサムで親切な、速水真澄という男が現れた。常に自分を持ち上げ有頂天にさせてくれる真澄に紫織は恋してしまいます。浮かれた彼女は自分は彼と一緒にいると体の調子がよくなる事に気づいてしまった。運よく婚約までこぎつけましたが、当の彼は、紫織に親切ではあるが自分の気持ちに応えてくれるようなそぶりを一行に見せてはくれない。真澄が紫織から離れてゆくような事があれば、再び病気が酷くなってしまうんじゃないか、以前の自分に戻ってしまうんじゃないか。その事を恐れた彼女は、常に彼を独占しないと気が済まないようになってしまったんじゃないでしょうか。

 

・速水真澄は、”健康に生きる”ための必須アイテム

 

紫織にとって速水真澄は、”健康に生きる”ための必須アイテムだったんじゃないかな、と想像します。心うきたつ夜を演出するお洒落な店でのデートで恋人気分を味わい、上流階級の仲間達から美男美女のカップルともてはやされ、家族や親族からも稼業を盛り立てる婚姻だと歓迎された。真澄がもたらしてくれた社会的称賛や、身近な人達の祝福によって、彼女の心は益々満たされ、病気が治った、体調は回復したと、そう認識するようになっていったのではないでしょうか。

 

たしかに真澄は紫織に幸福や健康をもたらしたかもしれませんが、それは単に”もたらした”だけあって決して紫織が自ら掴み取ったものではなかったはずです。病は本当は治っていないのだ、これは一時的なものなのだと、その事実を悟らないうちに彼女は婚約してしまった。そして気づいたときには、彼女は彼なしでは生きられない状況に陥っていた。そのため、真澄が自分より優先し、常に気にかけ、愛している存在を知った時、彼女は決して大げさな表現ではなく、命の危機を感じたのかもしれません。「真澄様がいなくなったら、わたしは再び病気になって、元の状態に戻ってしまう」と、強く危惧したのかもしれません。

 

・紫織は真澄より年上?

 

かといって、紫織はまだ妙齢の女性で、真澄一人に相手を定めずともまだまだ、他の男性に希望をもてたはずです。なんといっても彼女は鷹宮天皇とあだ名される権力者のただひとりの孫娘なのですから、天皇の権力さえあれば、結婚相手に苦労する事などないんじゃないのかな、と思います。愛されていない相手を追いかけるより、他の男性を探したほうがよほど建設的でしょう。なぜ真澄でないといけなかったのでしょうか。

 

わたしは紫織は、私達が想像する以上に、年齢的に相当焦っていたのではと思っています。紫織の年齢は作中にはでてきていませんが、わたしは、紫織の方が真澄より年上なのではと想像しています。

 

紫織の最初の登場は、舞妓さんのような日本髪にかんざしを挿し、派手な着物(振袖?)の後姿でした。顔は描かれていませんが、この図だけを見れば、かなり若い女性のように見受けられます。正面から描かれた場面になって、初めて彼女の全貌がわかるわけですが、最初の後姿が若かっただけに、第一印象は真澄の相手にしてはずいぶんと”老けた女性”のように感じられました。マヤは紫織の事を”大人な女性”と言っていますが、20歳のマヤから見ればかなり年上の女性とともとれます。

 

はたして紫織は何歳に描かれているのか…?化粧が濃いので分かり辛いですが、これまで作中に出てきたセレブ女性の中でも、亜弓より歌子ママの方が雰囲気が近いですし、(真澄より少し年上の)水城とセンスのよく似たスーツも着てます。

 

・不自然な敬語使い

 

またわたしが一番気になっているのが、真澄の紫織への言葉使いです。彼は常に紫織に敬語を使っています。(唯一敬語でなかったのはコミックス30巻で紫織が倒れた時の「大丈夫かい?」と言った時だけ。マヤの気を惹くため?)彼は結婚を申し込む前も、申し込んだ時も、婚約した後も、ずーっと紫織に敬語を使い続けています。相手が自分よりずっと格上の気を遣わななければならない家柄の令嬢だからといって、婚約者相手に敬語を使うものでしょうか?

 

真澄は紫織と精神的距離をとるためにわざと敬語を使っていた可能性もありますが、(このふたりは結婚後も敬語で喋るつもりだったのでしょうか?ものすごく息の詰まる生活になりそう…)紫織は真澄にもっと砕けた関係になりたがっていた割には、あまりにも気にしなさすぎなような気がします。紫織が真澄より年上だったこともあり、紫織も敬語を使われている状態が普通だったんじゃないでしょうか。


 

・真澄は飛んで火にいる夏の虫

 

真澄と出会うまで、男性と付き合ったこともなく、社会経験もしてこなかった紫織にとって、真澄が初めての恋人(になったつもり)だったと紫織の祖父が言っています。三十歳まで結婚しない女性は(連載されていた1980年代当時でも)普通に存在しているので、そこまで焦る必要はないと思いますが(独身と思われる水城は真澄より年上)恋愛をしたことがない、男性と付き合ったことがないとなれば、(将来の優秀なムコ獲りを期待されている彼女にとって)相当な焦りとプレッシャーがあったことでしょう。そこに白馬乗ってやってきたかのような男性が現れたのですから、飛び込んできた魚を逃すまいと必死になってしまったのも無理ありません。ましてや自分の健康問題も解決してくれる完璧な男性なら猶更です。真澄を失ったら次はないと思ってしまったのも頷けます。そんな真澄に紫織が恋に落ちてしまったのも、自然な流れだったのかもしれません。

 

・紫織は事故物件だった

 

小野寺や、円城寺まどかが言うように、上流の人間の目には、紫織は非常な美人で、強大な権力を持つ企業の孫娘で、凡人では太刀打ちできない、あたかもどこをとっても文句の付け所のない完璧な女性のような描き方をされていますが、もし紫織が真澄と殆ど変わらない年齢で、あの年まで結婚できていなかったとすれば、彼女は世間でいういわゆる”売れ残り”だった可能性は高いんじゃないでしょうか。

 

考えてもみてください。紫織はこれほどの巨大グループを率いる総帥のただ一人の孫娘なのです。彼女自身に後を継ぐ器量がないのなら、彼女の配偶者がその役割を担う事になるわけで、おそらく一人っ子の病弱な娘の相手は、彼女が十代の頃からリサーチされていたはずです。その紫織に三十歳近くまで相手が見つからなかったのは不自然です。相応しい相手がいたとしても、彼女の病気がネックになって、なかなか相手側が首を縦に振らなかった可能性が高いのではないでしょうか。

 

プライドの高い鷹宮側としては、妥協した相手を選びたくなかったでしょう。おそらく、真澄が登場当初の二十台の前半の頃なら、一代でのし上がった成金会社の跡継ぎの、しかも養子の彼などハナにも引っかからなかったのではないでしょうか。しかし年頃になってから十年近くも男性側から病気を理由に振られ続けれられれば、紫織の焦りもピークに達していたはずです。

そんなわけで、紫織側は配偶者の属性に対してグレードダウンを甘んじざるを得なかったのではないでしょうか。真澄は経営者としては完璧で、外見も教育も非の打ちどころのない男性ですから、成金で養子、という点さえ目をつぶれば、理想的な相手だったわけです。真澄側も、(彼の心は別として紫織が”病弱”であるという点さえ我慢すれば、文句をつけようがない相手になります。むしろ、マヤの件で傷ついていた真澄にとって、相手が病気がちだった方が都合がよかったのかもしれません。

 

がしかし、物語後半の紫織の壊れ方を見れば、世間知らずの箱入り娘がいかに危険で扱いにくい人間なのか、読者の方は既にお判りでしょう。まるで口のうまい外見の良いホストに堕ちるかのように、あれほど簡単に恋してしまうのであれば、真澄でなく相手が他の男性であったとしても、紫織にとって同じ結果になったのかもしれません。彼女は正真正銘の”事故物件”だったのではないでしょうか。

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つづく

 

つづきです↓

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④コミックス46巻、真澄にすっぽかされ美術館でブッ倒れる

 

姑息な手段で真澄からマヤを引き離し、小切手を握らせ(たつもりで)一安心?の紫織は、真澄を美術館の絵画鑑賞に誘います。平日の真昼間に仕事で忙しい男を呼び出す神経を疑いますが、わたしの魅力をもってすれば、そのぐらいの無理をさせることなど朝飯前だと自信があったのでしょうか。しかし重役の集まる会議がはいり、紫織は後回しにされてしまいます。「マヤを遠ざけさえすれば真澄様の心はわたしのもの」という目論みが外れてしまったショックからか、代理でやってきた水城の前で彼女は立ち眩みを起こします。

 

真澄のいないところで倒れてもあまり意味はないはず、、、この時の症状は、おそらく本物の立ち眩みだったと思われる場面ですが、この日の夜、彼女は意外な行動に出ます。真澄の仕事部屋に押しかけ「なぜ電話をしてこなかったのか、自分は仕事より大事だと思ってくれないのか」と、彼を責め立てたのです。自分が行けなかったことによってショックを受けた紫織が具合を悪くしたとすれば、彼はきっと気遣って、駆け付けるなり電話をするなりしてくれると踏んでいたのではないでしょうか。しかし彼は、電話一本よこさないばかりか、遅くに訪ねてきた紫織に驚いているようでした。全く自分の事を気にかけてくれていない真澄に撃沈の紫織でしたが、ぐだぐだとゴネた甲斐あって、週末に自分好みのデートに行く約束を取り付ることに成功しています。ひょっとしたら、この日の立ち眩みも自作自演だったのかもしれません。

 

④コミックス46巻、暴漢から身を呈してマヤを護る真澄の姿を目の当たりにしてブッ倒れる

 

③の出来事があったその日の夜、紫織は真澄が身を呈してマヤを暴漢する姿を目の当たりにしショックを受け倒れます。(倒れるというより腰をぬかして座りこんでいるという感じ。後に警備員が「紫織さまはショックで貧血をおこされて」と言ってるので、大都芸能で紫織がひっくり返ったときは”貧血”認定するように御触れがでているのでしょう)

ではここで、紫織がここでショックを受けた理由は何だったのか考えてみましょう。

A)真澄が暴漢から襲われているのを見て。B)真澄が自分の体を盾にしてマヤを庇っているのを見て。C)腰をぬかしている自分に真澄が気にかけてくれななくて。

C)の場合、真澄が紫織に背中を向けているので気付かないのは当然なのですが、紫織の性格上、真澄様は背中にも目がついていて常に私を見守ってくれているはずだと信じている節があるので可能性は否めません。そして彼女はこの時「誰かきて」と、助けを呼ぶため叫んでいます。(対するマヤは暴漢に向かって直接「やめて」と叫んでいるのが対照的)

 

確かにこの場合、人を呼ぶのが暴漢を追っ払うのに一番効果的ですが、紫織の場合、腰をぬかしている自分を助けてもらうため人を呼んだんではないでしょうか…と、わたしは疑っています。管理人の意地の悪さが如実に表れている推定ですが、紫織は暴漢を追っ払って真澄を助けるのは勿論、それ以外にどうしても人を呼ぶ必要があった。なぜなら、ケガを負った真澄から北島マヤを引き離さすために、助け起こしてもらう必要があったからです。さすがの紫織も、この時は「今は立ち眩みを起こしている場合じゃないわ。何としてでも立ち上がって、北島マヤを真澄様から遠ざけなければ」と危機感を持ったんじゃないでしょうか。

 

紫織が貧血を起こす時はいつも、真澄から「大丈夫ですか」と寄り添ってもらったり、次のデートの約束をとりつけたり、プロポーズをさせたり等、自分の望む答えをもらうまで、立ち上がったり回復したりすることはありませんでしたが、今回の紫織は、ほんのひと時医務室で休んでいただけで、ポセイドンのようにすぐさま蘇り、看病をしているマヤを追い払うため社長室に乗り込み行っています。そして、マヤを追い払った後、一晩つきっきりで真澄の看病をするのです。(真澄を自宅に送らず、もしくは、速水邸から人を呼ばなかったのは、おそらくマヤが戻ってきた時に備えて真澄を見張るため)

 

この日、紫織は二度、ひっくり返っています。そんな事があった日の夜に一晩、寝ずの番をしたわけですが、翌日ケロッとした顔で髪も服装も化粧の乱れすらもなく、元気そうにふるまっている姿には圧巻です。なんという体力なのでしょう。(←加藤みどり風)

この時の紫織は、ホンモノの貧血を起こしてブッ倒れていたと思われます。しかし、必要とあれば立ち上がる事ができるし、その気になれば、一晩寝ずの番をできるほどの体力の持ち主である事を、彼女は読者にばらしてしまったのでしたのではないでしょうか。

 

⑤コミックス47巻、港でマヤを伴った真澄に素通りされてブッ倒れる

 

③の場面で、(貧血で倒れてたのに)なぜ連絡をくれなかったんだと不満をぶつけに行った甲斐あって、紫織は真澄を週末デートを取り付けることに成功。豪華ダブルベッドが準備されたロイヤルスィートで過ごす豪華客船のワンナイトクルーズにサプライズで誘いました。しかし紫織は運悪く交通渋滞で車が遅れ乗船できず、代わりに真澄と一夜を過ごしたのは紫織に小切手を返しに来たマヤでした。港でおそらく一晩寝ずにイライラしながら待った紫織は、翌朝これまた服装も髪も化粧も何の乱れもなく、真澄を迎えます。

 

真澄はマヤを伴って下船したところ、待ち伏せていた…じゃなかった、迎えに来た紫織と対面します。真澄は紫織に破いた小切手を紫織に突き返し、マヤを伴い「僕はこの子を送っていく。あなたには改めて挨拶にうかがいます」と言って、紫織の傍らを通り過ぎようとします。真澄は明らかに憤っており冷めた態度を紫織にとっていますが、原因は小切手とダブルベッドの件で紫織の人間性を疑っていたからで、おそらく昨晩のマヤとの事がなく今ここでマヤがいなかったとしても、真澄は同じ態度をとったんじゃないでしょうか。しかし、紫織は、マヤが再び真澄に取り入ろうとしたため、自分は無碍にされたと勘違いしたのだと思います。そして、彼女はここで再びタイミングよくブッ倒れるのです。

 

コマをひとつ使って紫織の”クラリ”となっている場面が描かれていますので、実際に貧血の症状を表現しているのだと思われます。(前日の夜、寝てませんしね)しかし地面に倒れた瞬間は描かれていません。真澄とマヤは”ドサリ”という人が倒れる音を聞いて振り返り、初めて紫織が地面に倒れている姿を目撃しています。

 

ここで注目したいのが、紫織の倒れ方です。彼女は思いっきり顔を真下にして完全にうつ伏せの状態になっている。ドサリという音がするぐらいですから、手もつかない状態で思いっきり顔から地面めがかけて派手に倒れた事が予想されます。(もし手をつくぐらいの余裕をもって倒れたら、頭を守るため肘や手が先に地面につく格好になって、若干体が斜めになっているんじゃないでしょうか)もしこんな倒れ方をしたなら、きっと顔面は血だらけでしょう。出血してなくとも、額のどこかにたんこぶや痣を作ってお岩さんみたいな容貌になっているはずです。となると、医務室どころの話でなく、速攻入院して、やれCTだのMRIだのと、大騒ぎになっていると思われるのですが、紫織の顔には傷一つありません。真澄もその必要性を感じず、紫織を医務室に誘導しているだけですし、医師も「貧血性のめまい」と診断するだけにとどまっています。

 

おそらく紫織は、以前からケガをしない転び方を習得していて、真澄の視界に自分が入っていないをいい事に、上手く顔や頭をかばいながら、音がでるように派手な倒れ方をしたのではないでしょうか。真澄は倒れた紫織をちゃんと介抱していますが、以前より慌てていませんよね。内心「また紫織の”アレ”がはじまった」と呆れていたんじゃないのかな~というのが、わたしの想像です(笑)ついでにマヤも、(紫織につきそわなければならないから)タクシーで帰ってほしいと頼む真澄に、「あたしもここに残ります!速水さん!」と言っているので、鈍いマヤには珍しく女のカンが働いて、紫織の仮病の可能性に気づいていたんじゃないかな~と、思っています。マヤはそんな紫織と真澄をふたりきりにしたくないと思ったんじゃないでしょうか。

 

マヤと真澄を引き離すには、真澄の目の前でひっくり返るのが一番効果的なのは、大都芸能のロビーで起こした①の貧血場面で彼女は学習済みですよね。そして紫織は、この港の場面でもまた、真澄の優先順位をマヤから自分に移すことに成功し、”真澄の奪還”に成功したのだと再び自信をつけたんじゃないでしょうか。ですから、次の結婚式の打ち合わせであるレストランのシーンで真澄と顔を合わせた時も安心しており、何食わぬ顔をしていられたのだと思います。

 

⑥コミックス48巻、結婚式の打ち合わせの席で結婚を考え直してほしいと言われ、手首を切ってブッ倒れる。

 

③の美術館で真澄に関心を寄せてもらえず焦った紫織でしたが、④の社長室の場面では婚約者の権限でマヤを追い返す事に成功しましたし、⑤の港の場面でも真澄の奪還に成功して、真澄様は病気のわたしが頼むことは全て優先してくれると、まだこの時点で自信があったと思います。しかし事態は紫織の知らないところで進行しており、紫織の悪行が真澄の耳にはいるところとなってしまいました。真澄とマヤとの関係がこれまでと180度転換したこともあって、彼女はいきなり婚約者から破談を申し出られてしまいます。

 

自身がやらかしたマヤに対する嫌がらせを白日の下にさらされた上、悪だくみを自白させられ、自分が紫のバラの人だと真澄に名乗られ、紫織は後がなくなってしまいました。彼女は未来の鷹宮グループのトップの座を捨ててまで、自分との結婚を取り止めようとしている真澄に、本気で言っているのかと詰め寄りますが、「あなたが招待してくれたアストリア号で用意された部屋に通されたとき、あなたと結婚できないと気づいた」と真澄が答えると、ショックのあまり白目になってクラリと倒れそうになってしまいます。

 

真澄もこの時の紫織の異変に気付いていますし、これも紫織のホンモノの貧血の症状だと思われますが、興味深いことに彼女はここでブッ倒れないのですよね。代わりに「婚約パーティーもしてもらったのに」「披露宴のプログラムもきまりそうだったのに」「ハネムーンを楽しみしていたのに」「ウェディングドレスの仮縫いが明日」に控えていて「新居のインテリアも決まっていて家具も来週届く」だの、婚約破棄に伴う不都合な事実をつらつらとあげつらって、泣き落としにかかります。しかし時間をかけてシクシクと声をあげ泣き落とそうとしても真澄は同情の眼差しを投げかけるだけで、何も言いません。彼女は涙では真澄が動じない事を理解したのか、「わかりました。もうお心はかわりませんのね」と大人しく従うようなふりをして、化粧室に向かいます。

 

真澄と知り合ってから、紫織の精神はこの時最も激しく衝撃を受けたと思われますが、この時、貧血の症状はでていながらもブッ倒れなかったのは、おそらくここで倒れても真澄は自分を介抱してくれるだろうが、婚約破棄を撤回してくれることはない、ここで倒れても意味はないと悟っていたからではないでしょうか。倒れたい気持ちをぐっとこらえ、彼女はなんとか踏みとどまったのだと思います。

 

紫織は真澄にアストリア号のあのスィートルームをマヤと一緒に使ったのかと尋ねます。婚約破棄を承諾したのに、マヤと真澄がどうなっていようが本当はもう彼女には関係ないはず…しかし真澄が部屋の鍵をなくしたので使わなかったと答えると「安心しましたわ」と、答えるのです。そしてその後、彼女は化粧室で手首を切って自〇を図ります。

 

この時の紫織の心理状態はどうだったのでしょうか。一見自暴自棄になり、やけっぱちな行動に出ているように見えますが、わたしは彼女は完全に絶望しておらず一縷の望みを持っていた故の行動と想像しています。紫織は、肉体関係さえ結べば男と女の心は必ず結びつくものであり、逆に言えば、プラトニックな関係などで”魂のかたわれ”にはなれないという信念があったと思うのです。故に、真澄とマヤが男女の関係にない限り、まだ自分にもチャンスがある、ほんの少しでも希望があると、そう判断したんじゃないでしょうか。

 

真澄とマヤが何の関係も持っていないことに「安心した」彼女は、ふたりを引き離すため、最後の賭けに打って出たのです。それがあの化粧室での自〇未遂だったのでははいでしょうか。わたしはこの⑥のレストランの場面が、最も濃厚に紫織の仮病説を裏付けている場面ではないかと疑っています。

 

しっかし、切れ味の悪そうなコンパクトの鏡の破片であそこまで血を出すのは時間がかかったことでしょう。狂言自〇の割にはかなり血がでていましたけど、傷は「幸い大事には至らなかった」との事でしたから、そこまで深く切れていなかったようですね。痛くなかったのかな~、、わたしなら途中で挫折しそう…

 

・紫織の名芝居?

 

もしこの仮定が本当なら、ここまで真澄と読者を騙し通せるなんて、紫織は「紅天女」候補級の演技力の持ち主だった、とも想像できます。ひょっとしたら、この一連の事件の意味するところは、将来彼女も「紅天女」の上映権獲得?に乗り出すフラグだったのかもしれません。(なせなら「紅天女」の上演権は主役にのみ譲られるからです!)50巻以降、「演れる…!演れるわ…!わたしにも阿古夜が演れる…!」と、白目むき出し野心メラメラの紫織を拝む日が来るかも…。そうなれば、(別の生き甲斐をみつけた)彼女はもはやマヤも眼中いないでしょうし、病気も難なく克服して、真澄の事など気にも掛けなくなるかもしれません。(メデタシメデタシ)

 

「紅天女」は、最愛にして唯一の男性、尾崎一連を失った月影千草の当たり役だったのですから、マヤ、亜弓、紫織の中で、紫織が一番の適役な気もします。(月影先生の若い頃と紫織って似てますしね)もしそうなれば、50巻以降、私達読者が予想もしない展開がこの先待っているかもしれません。

 

冗談のようなこの説?を支持されている方も、ファンの中にいらっしゃるようです。わたしもこの説を念頭におきながら、50巻以降を楽しみにしたいと思いますが、そうなればオチをどうするかが課題ですよね~☆マヤは真澄を得られるのだから、意外とあっさりと上演権を諦めるかもだけど、亜弓は黙っていないかな。「あれほどの才能を卑怯な手を使って追い落とすなんて、役者の風上にもおけない…!」なんて言って、再び吸血鬼になっちゃうかも…。。

 

・慎ましさとは真逆の女性?

 

さてこれまで、紫織の立ち眩み=仮病説をつらつらと書き連ねてきました。病気のため、置かれている立場もあって、好きな事を我慢し、自分を抑え、彼女は控えめな生き方を余儀なくされてきたのかもしれませんが、本来紫織は見識の浅い(聡明ではない)、寛容ではない(優しくない)、歪みのある(美しくない)”慎ましさ”とは真逆の女性だったのかもしれませんね。

 

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つづく