つづきです↓

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④コミックス46巻、真澄にすっぽかされ美術館でブッ倒れる

 

姑息な手段で真澄からマヤを引き離し、小切手を握らせ(たつもりで)一安心?の紫織は、真澄を美術館の絵画鑑賞に誘います。平日の真昼間に仕事で忙しい男を呼び出す神経を疑いますが、わたしの魅力をもってすれば、そのぐらいの無理をさせることなど朝飯前だと自信があったのでしょうか。しかし重役の集まる会議がはいり、紫織は後回しにされてしまいます。「マヤを遠ざけさえすれば真澄様の心はわたしのもの」という目論みが外れてしまったショックからか、代理でやってきた水城の前で彼女は立ち眩みを起こします。

 

真澄のいないところで倒れてもあまり意味はないはず、、、この時の症状は、おそらく本物の立ち眩みだったと思われる場面ですが、この日の夜、彼女は意外な行動に出ます。真澄の仕事部屋に押しかけ「なぜ電話をしてこなかったのか、自分は仕事より大事だと思ってくれないのか」と、彼を責め立てたのです。自分が行けなかったことによってショックを受けた紫織が具合を悪くしたとすれば、彼はきっと気遣って、駆け付けるなり電話をするなりしてくれると踏んでいたのではないでしょうか。しかし彼は、電話一本よこさないばかりか、遅くに訪ねてきた紫織に驚いているようでした。全く自分の事を気にかけてくれていない真澄に撃沈の紫織でしたが、ぐだぐだとゴネた甲斐あって、週末に自分好みのデートに行く約束を取り付ることに成功しています。ひょっとしたら、この日の立ち眩みも自作自演だったのかもしれません。

 

④コミックス46巻、暴漢から身を呈してマヤを護る真澄の姿を目の当たりにしてブッ倒れる

 

③の出来事があったその日の夜、紫織は真澄が身を呈してマヤを暴漢する姿を目の当たりにしショックを受け倒れます。(倒れるというより腰をぬかして座りこんでいるという感じ。後に警備員が「紫織さまはショックで貧血をおこされて」と言ってるので、大都芸能で紫織がひっくり返ったときは”貧血”認定するように御触れがでているのでしょう)

ではここで、紫織がここでショックを受けた理由は何だったのか考えてみましょう。

A)真澄が暴漢から襲われているのを見て。B)真澄が自分の体を盾にしてマヤを庇っているのを見て。C)腰をぬかしている自分に真澄が気にかけてくれななくて。

C)の場合、真澄が紫織に背中を向けているので気付かないのは当然なのですが、紫織の性格上、真澄様は背中にも目がついていて常に私を見守ってくれているはずだと信じている節があるので可能性は否めません。そして彼女はこの時「誰かきて」と、助けを呼ぶため叫んでいます。(対するマヤは暴漢に向かって直接「やめて」と叫んでいるのが対照的)

 

確かにこの場合、人を呼ぶのが暴漢を追っ払うのに一番効果的ですが、紫織の場合、腰をぬかしている自分を助けてもらうため人を呼んだんではないでしょうか…と、わたしは疑っています。管理人の意地の悪さが如実に表れている推定ですが、紫織は暴漢を追っ払って真澄を助けるのは勿論、それ以外にどうしても人を呼ぶ必要があった。なぜなら、ケガを負った真澄から北島マヤを引き離さすために、助け起こしてもらう必要があったからです。さすがの紫織も、この時は「今は立ち眩みを起こしている場合じゃないわ。何としてでも立ち上がって、北島マヤを真澄様から遠ざけなければ」と危機感を持ったんじゃないでしょうか。

 

紫織が貧血を起こす時はいつも、真澄から「大丈夫ですか」と寄り添ってもらったり、次のデートの約束をとりつけたり、プロポーズをさせたり等、自分の望む答えをもらうまで、立ち上がったり回復したりすることはありませんでしたが、今回の紫織は、ほんのひと時医務室で休んでいただけで、ポセイドンのようにすぐさま蘇り、看病をしているマヤを追い払うため社長室に乗り込み行っています。そして、マヤを追い払った後、一晩つきっきりで真澄の看病をするのです。(真澄を自宅に送らず、もしくは、速水邸から人を呼ばなかったのは、おそらくマヤが戻ってきた時に備えて真澄を見張るため)

 

この日、紫織は二度、ひっくり返っています。そんな事があった日の夜に一晩、寝ずの番をしたわけですが、翌日ケロッとした顔で髪も服装も化粧の乱れすらもなく、元気そうにふるまっている姿には圧巻です。なんという体力なのでしょう。(←加藤みどり風)

この時の紫織は、ホンモノの貧血を起こしてブッ倒れていたと思われます。しかし、必要とあれば立ち上がる事ができるし、その気になれば、一晩寝ずの番をできるほどの体力の持ち主である事を、彼女は読者にばらしてしまったのでしたのではないでしょうか。

 

⑤コミックス47巻、港でマヤを伴った真澄に素通りされてブッ倒れる

 

③の場面で、(貧血で倒れてたのに)なぜ連絡をくれなかったんだと不満をぶつけに行った甲斐あって、紫織は真澄を週末デートを取り付けることに成功。豪華ダブルベッドが準備されたロイヤルスィートで過ごす豪華客船のワンナイトクルーズにサプライズで誘いました。しかし紫織は運悪く交通渋滞で車が遅れ乗船できず、代わりに真澄と一夜を過ごしたのは紫織に小切手を返しに来たマヤでした。港でおそらく一晩寝ずにイライラしながら待った紫織は、翌朝これまた服装も髪も化粧も何の乱れもなく、真澄を迎えます。

 

真澄はマヤを伴って下船したところ、待ち伏せていた…じゃなかった、迎えに来た紫織と対面します。真澄は紫織に破いた小切手を紫織に突き返し、マヤを伴い「僕はこの子を送っていく。あなたには改めて挨拶にうかがいます」と言って、紫織の傍らを通り過ぎようとします。真澄は明らかに憤っており冷めた態度を紫織にとっていますが、原因は小切手とダブルベッドの件で紫織の人間性を疑っていたからで、おそらく昨晩のマヤとの事がなく今ここでマヤがいなかったとしても、真澄は同じ態度をとったんじゃないでしょうか。しかし、紫織は、マヤが再び真澄に取り入ろうとしたため、自分は無碍にされたと勘違いしたのだと思います。そして、彼女はここで再びタイミングよくブッ倒れるのです。

 

コマをひとつ使って紫織の”クラリ”となっている場面が描かれていますので、実際に貧血の症状を表現しているのだと思われます。(前日の夜、寝てませんしね)しかし地面に倒れた瞬間は描かれていません。真澄とマヤは”ドサリ”という人が倒れる音を聞いて振り返り、初めて紫織が地面に倒れている姿を目撃しています。

 

ここで注目したいのが、紫織の倒れ方です。彼女は思いっきり顔を真下にして完全にうつ伏せの状態になっている。ドサリという音がするぐらいですから、手もつかない状態で思いっきり顔から地面めがかけて派手に倒れた事が予想されます。(もし手をつくぐらいの余裕をもって倒れたら、頭を守るため肘や手が先に地面につく格好になって、若干体が斜めになっているんじゃないでしょうか)もしこんな倒れ方をしたなら、きっと顔面は血だらけでしょう。出血してなくとも、額のどこかにたんこぶや痣を作ってお岩さんみたいな容貌になっているはずです。となると、医務室どころの話でなく、速攻入院して、やれCTだのMRIだのと、大騒ぎになっていると思われるのですが、紫織の顔には傷一つありません。真澄もその必要性を感じず、紫織を医務室に誘導しているだけですし、医師も「貧血性のめまい」と診断するだけにとどまっています。

 

おそらく紫織は、以前からケガをしない転び方を習得していて、真澄の視界に自分が入っていないをいい事に、上手く顔や頭をかばいながら、音がでるように派手な倒れ方をしたのではないでしょうか。真澄は倒れた紫織をちゃんと介抱していますが、以前より慌てていませんよね。内心「また紫織の”アレ”がはじまった」と呆れていたんじゃないのかな~というのが、わたしの想像です(笑)ついでにマヤも、(紫織につきそわなければならないから)タクシーで帰ってほしいと頼む真澄に、「あたしもここに残ります!速水さん!」と言っているので、鈍いマヤには珍しく女のカンが働いて、紫織の仮病の可能性に気づいていたんじゃないかな~と、思っています。マヤはそんな紫織と真澄をふたりきりにしたくないと思ったんじゃないでしょうか。

 

マヤと真澄を引き離すには、真澄の目の前でひっくり返るのが一番効果的なのは、大都芸能のロビーで起こした①の貧血場面で彼女は学習済みですよね。そして紫織は、この港の場面でもまた、真澄の優先順位をマヤから自分に移すことに成功し、”真澄の奪還”に成功したのだと再び自信をつけたんじゃないでしょうか。ですから、次の結婚式の打ち合わせであるレストランのシーンで真澄と顔を合わせた時も安心しており、何食わぬ顔をしていられたのだと思います。

 

⑥コミックス48巻、結婚式の打ち合わせの席で結婚を考え直してほしいと言われ、手首を切ってブッ倒れる。

 

③の美術館で真澄に関心を寄せてもらえず焦った紫織でしたが、④の社長室の場面では婚約者の権限でマヤを追い返す事に成功しましたし、⑤の港の場面でも真澄の奪還に成功して、真澄様は病気のわたしが頼むことは全て優先してくれると、まだこの時点で自信があったと思います。しかし事態は紫織の知らないところで進行しており、紫織の悪行が真澄の耳にはいるところとなってしまいました。真澄とマヤとの関係がこれまでと180度転換したこともあって、彼女はいきなり婚約者から破談を申し出られてしまいます。

 

自身がやらかしたマヤに対する嫌がらせを白日の下にさらされた上、悪だくみを自白させられ、自分が紫のバラの人だと真澄に名乗られ、紫織は後がなくなってしまいました。彼女は未来の鷹宮グループのトップの座を捨ててまで、自分との結婚を取り止めようとしている真澄に、本気で言っているのかと詰め寄りますが、「あなたが招待してくれたアストリア号で用意された部屋に通されたとき、あなたと結婚できないと気づいた」と真澄が答えると、ショックのあまり白目になってクラリと倒れそうになってしまいます。

 

真澄もこの時の紫織の異変に気付いていますし、これも紫織のホンモノの貧血の症状だと思われますが、興味深いことに彼女はここでブッ倒れないのですよね。代わりに「婚約パーティーもしてもらったのに」「披露宴のプログラムもきまりそうだったのに」「ハネムーンを楽しみしていたのに」「ウェディングドレスの仮縫いが明日」に控えていて「新居のインテリアも決まっていて家具も来週届く」だの、婚約破棄に伴う不都合な事実をつらつらとあげつらって、泣き落としにかかります。しかし時間をかけてシクシクと声をあげ泣き落とそうとしても真澄は同情の眼差しを投げかけるだけで、何も言いません。彼女は涙では真澄が動じない事を理解したのか、「わかりました。もうお心はかわりませんのね」と大人しく従うようなふりをして、化粧室に向かいます。

 

真澄と知り合ってから、紫織の精神はこの時最も激しく衝撃を受けたと思われますが、この時、貧血の症状はでていながらもブッ倒れなかったのは、おそらくここで倒れても真澄は自分を介抱してくれるだろうが、婚約破棄を撤回してくれることはない、ここで倒れても意味はないと悟っていたからではないでしょうか。倒れたい気持ちをぐっとこらえ、彼女はなんとか踏みとどまったのだと思います。

 

紫織は真澄にアストリア号のあのスィートルームをマヤと一緒に使ったのかと尋ねます。婚約破棄を承諾したのに、マヤと真澄がどうなっていようが本当はもう彼女には関係ないはず…しかし真澄が部屋の鍵をなくしたので使わなかったと答えると「安心しましたわ」と、答えるのです。そしてその後、彼女は化粧室で手首を切って自〇を図ります。

 

この時の紫織の心理状態はどうだったのでしょうか。一見自暴自棄になり、やけっぱちな行動に出ているように見えますが、わたしは彼女は完全に絶望しておらず一縷の望みを持っていた故の行動と想像しています。紫織は、肉体関係さえ結べば男と女の心は必ず結びつくものであり、逆に言えば、プラトニックな関係などで”魂のかたわれ”にはなれないという信念があったと思うのです。故に、真澄とマヤが男女の関係にない限り、まだ自分にもチャンスがある、ほんの少しでも希望があると、そう判断したんじゃないでしょうか。

 

真澄とマヤが何の関係も持っていないことに「安心した」彼女は、ふたりを引き離すため、最後の賭けに打って出たのです。それがあの化粧室での自〇未遂だったのでははいでしょうか。わたしはこの⑥のレストランの場面が、最も濃厚に紫織の仮病説を裏付けている場面ではないかと疑っています。

 

しっかし、切れ味の悪そうなコンパクトの鏡の破片であそこまで血を出すのは時間がかかったことでしょう。狂言自〇の割にはかなり血がでていましたけど、傷は「幸い大事には至らなかった」との事でしたから、そこまで深く切れていなかったようですね。痛くなかったのかな~、、わたしなら途中で挫折しそう…

 

・紫織の名芝居?

 

もしこの仮定が本当なら、ここまで真澄と読者を騙し通せるなんて、紫織は「紅天女」候補級の演技力の持ち主だった、とも想像できます。ひょっとしたら、この一連の事件の意味するところは、将来彼女も「紅天女」の上映権獲得?に乗り出すフラグだったのかもしれません。(なせなら「紅天女」の上演権は主役にのみ譲られるからです!)50巻以降、「演れる…!演れるわ…!わたしにも阿古夜が演れる…!」と、白目むき出し野心メラメラの紫織を拝む日が来るかも…。そうなれば、(別の生き甲斐をみつけた)彼女はもはやマヤも眼中いないでしょうし、病気も難なく克服して、真澄の事など気にも掛けなくなるかもしれません。(メデタシメデタシ)

 

「紅天女」は、最愛にして唯一の男性、尾崎一連を失った月影千草の当たり役だったのですから、マヤ、亜弓、紫織の中で、紫織が一番の適役な気もします。(月影先生の若い頃と紫織って似てますしね)もしそうなれば、50巻以降、私達読者が予想もしない展開がこの先待っているかもしれません。

 

冗談のようなこの説?を支持されている方も、ファンの中にいらっしゃるようです。わたしもこの説を念頭におきながら、50巻以降を楽しみにしたいと思いますが、そうなればオチをどうするかが課題ですよね~☆マヤは真澄を得られるのだから、意外とあっさりと上演権を諦めるかもだけど、亜弓は黙っていないかな。「あれほどの才能を卑怯な手を使って追い落とすなんて、役者の風上にもおけない…!」なんて言って、再び吸血鬼になっちゃうかも…。。

 

・慎ましさとは真逆の女性?

 

さてこれまで、紫織の立ち眩み=仮病説をつらつらと書き連ねてきました。病気のため、置かれている立場もあって、好きな事を我慢し、自分を抑え、彼女は控えめな生き方を余儀なくされてきたのかもしれませんが、本来紫織は見識の浅い(聡明ではない)、寛容ではない(優しくない)、歪みのある(美しくない)”慎ましさ”とは真逆の女性だったのかもしれませんね。

 

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つづく