小唄備忘録500番―その179「待ちわびて(お浦新三)」 | 江戸小唄と三味線のブログ

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恋しい人を待ちわびて何時しかまどろみ、ひとり涙で袖を濡らすという内容で、芝居(*)の挿入唄です。

 

歌沢節(*)から採り入れ、鐘の音や村雨を織り込みゆったり情緒纏綿たる小唄となっています。

 

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解説:唄の意味は、恋しい人を待ちわびているうちに、何時とはなしにまどろみ、枕元に聞こえてくる鐘の音も夢か現(うつつ)かのようである。目が覚めてもその人は来ず、ひとり涙で袖を濡らすばかりである。気がつくと、外を濡らす雨も激しく降ってきた、というものです。

 

(*)芝居は、河竹黙阿弥作、明治十五年(新暦十一月)の新富座「偽甲当世簪(マガイコウトウセイカンザシ)」初演で、東京の六尺長屋(別名朝鮮長屋)の鼈甲屋経屋の娘お浦と同業の深川和国屋息子新三郎を巡る世話物です。この唄は「浅草田圃富士見二階の場」で、なかなか一緒に外出も出来ない二人が料亭「富士見」の二階でしみじみ夫婦の語らいをしている時、象潟町から聞こえてくる歌沢の一節です。近年この芝居の公演はないようです。

 

(*)歌沢(哥沢)節は、江戸後期旗本の笹本彦太郎が創始者、主に端唄から派生し、品の良さゆったり感が特徴です。

 

小唄備忘録500番―その179「待ちわびて(お浦新三)」(1分56秒)

 

明治十五年 河竹黙阿弥作詞、六世富本豊前掾作曲。画は伊東深水(色紙)です。