おすすめBL漫画『ことのはころり』 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

偏食猫の好きなものを好きなだけ

好きなもの=漫画、小説、時々映画について書きます。かなり偏りがあります。

 

暮田マキネ『ことのはころり』

 

(あらすじ)

【変化を望み、変化に苦しみ、変化はやがて、恋になる――】
大学進学を機に地方から上京した周は、自身の方言にコンプレックスを抱くようになっていた。そんなある日、方言丸出しで話しているところを初対面の森谷に聞かれてしまう。なぜか森谷に「可愛い」と迫られ、咄嗟に逃げてしまった周だけど、変化は突然訪れて……?

 

方言てすごくいい。周くんがすごくいい。  85点

 

方言ていいですよね。憧れがあります。『ことのはころり』は、その方言で悩んだりつらい思いをした大学生の周くんが、新しい仲間、そして大切に思える人と出会っていくお話です。

 

周くんは山梨県出身の大学生。上京してすぐに方言のことをからかわれたことがきっかけで、人と話すことがうまくできなくなっています。だからバイト先でも周囲とうまくやっていけてません。(週6で入れているのに!!)

 

周くんの、からかいをうまく受け流せない自分、人間関係につまずいてしまった自分のことが受け入れられないという辛さは、誰しも共感できる部分があるんじゃないでしょうか。特に新しい環境に身を置いたときの人間関係の構築ってプレッシャーがすごいし、難しい。もうね、周は何も悪いことをしてないのよ。なのに・・って苦しくなりました。また、周がすごくいい子でね。笑顔がすごくかわいい。「この子には絶対幸せになってほしい!!」と強く思いました。

 

だいたい、バイト先の人間がどいつもこいつもクソ野郎すぎてね。アルバイトたちだけでなく、社員ぽい大人もひどい。バイトでのエピソードは、どれも本当に胸クソが悪くなりました。でも意外と現実ってこんなものなのかな。根拠のない噂とか、ちょっと自分たちと違うってだけで排除しようとするとか。いやだわー。私は心が狭い人間なので、あのあと、バイトの人たちはきっと何かしら不幸な目にあったに違いないと勝手に妄想していましたよ。

 

周の甲州弁、とっても魅力的です。なんだか温かい感じがするんだよね。全然わからない単語とかあって(コマ外にちゃんと標準語での意味が書いてある)興味深かったです。そんな方言で別れた彼女と電話をしていた周と出会った志信。

 

この志信がすごい。フワフワグイグイきます。もともと、周のことは店員さんとして知っていてタイプだったらしいんだけど、さらに方言、泣き顔と来て、もうすっかり周にゾッコン(古い)になるんで すね。なんというんでしょうか。自分の感情とか欲求とかそういうものに忠実で自由な人。でも、優しい人でもあるので、最初は警戒心丸出しだった周も、拒絶はしきれないで側にいることを何となく許している感じ。

 

そして、志信に連れていかれるままに民俗研究会に入会させられます。民俗研究会のメンバーの皆さんがまた個性豊かな面々でとても楽しい。大学を舞台にした作品て多いけど、こういう研究会とかサークルでわちゃわちゃしているのがもっとあってもいいのにと思ってしまいました。部長の可愛い見た目に似合わずマイペースなところや研究熱心なところ、ちょっと座敷わらし的な可愛さ不思議な安心感がありますよね。世話焼きタイプの虎徹くんが関西弁でズケズケ言うところも良かったなー。民俗研究会のお話だけで読みたいくらい。

 

この民俗研究会で方言も自分自身も肯定的に受け入れられたことで、周に笑顔が戻ります。いやーよかった。さらに犬のように尻尾ブンブンで自分にまとわりついて(?)くる志信にも心を許し始めていくのですが!!ここでまたバイト先の奴らが!!

 

まあ、心が波立つところはありますが、それは本当にバイト先でのエピソードだけで、基本的には優しくて幸せな気持ちになれる作品です。周が苦労して頑張っているのはわかっていたのですが、最後の最後に志信の家庭事情がもしかしたらちょっと複雑かもしれないことがわかり、きっとこの2人はずっと一緒にお互いを大切にしながら暮らしていくんだろうなーとしみじみ思いました。周もだけど、志信も寂しかったのかもね。

 

暮田先生の作品でも、重さや暗さは無く、でもちゃんと心に残るものある優しい良作『ことのはころり』、オススメです!!