おすすめBL漫画『この犬はまだ甘い毒を知らない』 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

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ここのつヒロ『この犬はまだ甘い毒を知らない』

 

(あらすじ)

故障した野球部のエース投手・松本。手負いの「犬」になにかとお世話を強いる先輩「榊家」ご子息・榊。三年生で一人きりの園芸部部長でもある榊に、リハビリ期間中、気付けば飼いならされていた松本はついにレギュラー復活できることに。榊からは祝福とともに「世話係」解放を伝えられるが、松本は拒絶する。何故ならば……もう何度も頭の中で榊を汚してきたからだ──。

 

大人になってからの2人がとてもいい!!  90点

 

ここのつヒロ先生の『この犬はまだ甘い毒を知らない』は絶対2巻まで読んでください!!2巻まで読んで、本当の完結です。もう感動もひとしお、最高の読後感でした。

 

1巻は、高校時代のお話。野球部のエース松本(まっつん)は負傷してリハビリ中。先輩・榊さんに拾われ(怪我をさせた償いとして)、「わんこ」として雑用を言いつけられる日々。でも雑用と言ってもかわいいもの。しかもプロテインを作ってくれたり、ギクシャクした野球部の仲間との関係修復のきっかけを作ってくれたり、何より真面目すぎるまっつんに肩の力の抜き方を教えてくれるんです。最初は「変な先輩」としか思っていなかったまっつんにとって次第に榊さんとの時間がある種の癒やしになっていきます。

 

そして、当然のことながらこんなに綺麗な先輩ですからね。まっつんは榊に対して好意だけでなく欲望も抱いていくわけですね~。わかるよわかる!!妄想しまくりのまっつん。どうやら、これまでつきあってきた人はいたけど、向こうから来られて流されるままにという感じだったらしく、初めての執着心さえも榊さんに抱きます。わかるよわかる!!そして、ものすごく直接的に、むしろ荒々しく思いをぶつけます!!いいぞーいけいけ!!

 

でも、思いを(欲求を?)ぶつけても、榊さんはまっつんを拒絶します。なぜ?絶対まっつんのこと好きでしょ?となりますが、彼の生き方を決めた祖父の言葉、そしてそれを言われるきっかけとなった過去などが語られて、今はフワフワとして優しい榊さんの心に残る傷と不安がわかるんです。いや、ここは辛かった。

 

だからこそ、まっつんのここからの頑張りがすごく嬉しかったですね。榊さんがまっつんを自分専用「わんこ」にした意図や榊さんの想いがわかる最後も良かった。ただ、最後はページが足りなかったのか、駆け足になってしまっている部分もあったような気がしました。そこがちょっと残念だったかな。

 

な~んて思ったら、2巻がある!!

 

ということで、2巻はそんな彼らが社会人になっています。榊は父親の会社に入って奮闘中。松本も自動車整備士として頑張っていて、もちろん2人の仲もいい感じに進行中。

 

2巻がのっけからすごいのは、2人の美しさ、かっこよさがレベルアップしているところ。榊は社会人らしいく大人の雰囲気を漂わせていますが、何より美しさが増している!!そして!!まっつんが!!もうこれは是非実際に見ていただきたい!!かっこいいです!!かっこよすぎます!!整備士だからツナギなんて着てたりするんですが、もうね、ヤバいですよ。眼福すぎる。

 

で、お互い、相手のことを大好きすぎるのですが、もうね、お互いを見る視線の色っぽさがもうすごい。まっつんに熱く見つめられて榊さんが顔を赤らめる場面。いや、こっちも赤面したわ!!2巻は榊さん視点で語られていくのですが、どんどんかっこよくなっていくまっつんに榊さんはずっとドキドキしっぱなしなんですね~。もう素晴らしすぎますね。最高。

 

まっつんは高校卒業のタイミングで、榊さんに対してプロポーズをしています。さすが高校球児、真面目!!そして誠実なんです。それに対して「一生分の幸福を貰ってしまったと思った」という榊さんが心のなかで誓ったこと。いやー、なんていうんですかね。本当にお互いに相手をすごく大事にしているのがわかるのが、尊いし切ない。2人それぞれの想いの真剣さと、照れ隠しの榊さんの反応やミニチュアの2人(ちょいちょい出てきます)の可愛さのギャップというか緩急がこの場面はすごいなーと思いました。

 

しかも。この甘い回想シーンの次のページをめくるといきなり全裸の2人ですから。やられましたね。うまいなーと。2巻は大人になった2人だから(なのか?)エロも濃厚なのがたくさん描かれています。とにかく美しいし、体格差がいい感じだし、エロさもちゃんとあるし、とそこも見てほしい!!

 

そんな2人ですが、それぞれに転機、試練に直面します。

 

まず、まっつんは少年野球チームの監督への就任。最初は迷うまっつんですが、榊さんが背中を押してあげて(ここの榊さんの言葉もいい!)挑戦してみることに。ずっと打ち込んできたものですからね。活き活きしてます。

 

一方、榊さんの方はかなり厳しい状況に。その原因となるのが交渉難航中の地主仁。差別的だし、高圧的だし、榊さんに対しての言動がひどい。でもこの人にも過去があり、多くのものを抑圧して生きてきた人だということが語られます。なるほど、だから榊さんを目の敵に・・と思うと許せないけど、嫌いになれない。そう、この作品て登場人物たちがみんなちゃんと説得力をもっているというか、ちゃんと生きている感じがするんですよね。そこもすごいと思うし、作品の厚みになっている。この仁藤の孫がまっつんの野球チームに入ってきて・・とここからの展開と決着のつけ方もとてもよかったです。

 

でも何よりよかったし、グッときたのは、榊さんの腹のくくり方、覚悟してからの行動。自分にとって大事なまっつんも仕事も諦めないという強い意思がすごい。「これでもう2人は大丈夫」と信じられる、これ以上ない終わり方でした。

 

1巻でも強い絆で結びついた2人でしたが、2巻で心から笑い合って幸せに生きていく2人のこれからが確信できました!!ここのつヒロ先生、ありがとうございます!!

 

あ、あと私はかわいいミニチュアの2人のギャグっぽいシーンとか、1巻のまっつんの家族と榊さんの交流の場面が好きでした。まっつんと榊さんの話が結構深刻というか切ないところもある分、こういう場面がすごく効いています。まっつんの妹や弟たちの榊さんへの懐き具合とまっつんの大人気なく張り合ってからのふて寝とか最高です。

 

『この犬はまだ甘い毒を知らない』全2巻、読み応えもありますし、何より最後とっても幸せな気持ちになれる作品ですので、ぜひ読んでみてください!!!