おすすめBL漫画『こっち向いて笑って』 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

偏食猫の好きなものを好きなだけ

好きなもの=漫画、小説、時々映画について書きます。かなり偏りがあります。

 

 

市川けい『こっち向いて笑って』

 

(あらすじ)

居酒屋でバイトする浅野は、特に親しくもなかった無愛想なイケメン・筧に「あんたの事好きなんですよ」と告白され人知れずパニックに。しかし、それからも拍子抜けするほど態度の変わらない筧。意識し始めたのは浅野の方で…。告白からはじまり、ゆっくり心が近づく恋。せつなさ最強の市川けいのセカンドコミックス!

 

 

超ツンデレ受け、というかほとんどツンな受け   82点

 

市川けい先生のこちらの作品『こっち向いて笑って』は、コミックス2作品目だそうです。言われてみれば絵が若い。『ブルースカイコンプレックス』の最初の方ってこういう絵だったよねと思いましたー。でもすでに先生の作品の魅力である、会話の妙や印象的なモノローグ、繊細な心理描写などが詰まっていて「さすが」という感じ。

 

大学生2人、同じ居酒屋でバイトする浅野と筧のお話。いきなり筧に告白されて戸惑う浅野ですが、その後それらしい言動を全く見せない筧にさらに戸惑います。この筧が、ほんとに恋愛どころか人にも興味が無さそうな人なんですね。たしかにアレは告白だったのか??と思ってしまうのも無理はない。浅野が話しかけてもなんか怒ってるし。


ところが実は頭の中では浅野で妄想しまくり、すっごく浅野のことを好きなんですねー。しかもバイト初日にあったある一件から浅野のことが気になり始めてって結構前からじゃん!!!告白したのも、絶対拒絶されるだろうからそれなら諦めがつくと思ったという・・うわー、なんかわかるわ。恋に落ちるきっかけも、どんどん好きになる感じも、そんな想いを抱えたままでいるのがつらすぎて現状さえも破壊したいって思う気持ちも。筧の心情のわかりみが深すぎました。


あと筧は、人に興味がないとかではなくて、変に取り繕ったりすることが苦手なだけなんですね。実は話したら面白いし(本人は嫌かもだけど)、むしろちゃんと知ろうとすれば魅力も見えてくる、そんな人。だからバイト仲間たちがだんだん筧にちょっかいを出すようになってなんだかんだ仲良くなっていくのもすごく良かったですねー。


浅野くんがまた、とっても面白い子で魅力的でした。すごく明るくて友達たくさん!てタイプかと思いきや、実はそうでもないらしい。飲み会とかもほとんど参加しないし、自分のこともあまり積極的には語らない。実は苦学生で、勉強もしっかり頑張ってる真面目な性格。


過去の彼女とは告白されたからつきあったけど、自分から好きになることはなくて振られたと冷静に振り返っていた彼が、筧と関わるようになるうちに気持ちが変化していくんですねー。執着を見せるんです!!!筧への執着!!!


しかも「変化」とさらりと書きましたが、そこは市川けい先生ですよ。いろいろな細かいエピソードを挟みながら、本当に少しずつちょっとずつ、筧への気持ちが「好き」になっていく過程を繊細に描いておられます。いい!結構最後の方は浅野もかなり筧のこと好きになっていて、いやもうお見事というしかない。


このお話は2人が想いを確かめ合う(付き合う)までが描かれています。あとがきで市川先生が「このカップルはここからが私的には面白いんじゃないかと気づいた」と書かれているんですが、それもわかるなーと強く思いました。つきあい始めたカップルがいろいろなことを乗り越えたり、一緒に経験したりして愛を深めて行く過程、『ブルースカイコンプレックス』で存分に楽しませてもらってますから。


でも、この筧と浅野の2人の関係が始まっていくまでの

あれやこれやもすごく楽しみました。低体温な2人ですけどね。低温やけどしそうなくらい熱いです。


しかも、こちらの続編的作品『ルッカットミー こっち向いて笑って』があって、そちらでは2人のその後も読めます。筧は案の定って感じでしたが、仲の深まりを感じさせて嬉しかったなー。あと浅野の同居人の従兄弟佐々木と謎多き大人片岡の話も入っていて、私はこっちもかなり好きでした。この2人の会話!!これを書けるのは市川先生くらいしかいないと思う!!この2人のこの感じはリバもありだよなーという不思議な納得感がありました。


ということで、低温やけどには気をつけて!!『こっち向いて笑って』おすすめです。