日本国内で医療機器(medical device)を製造販売し、それを公的健康保険(national health insurance)の適用対象とするには、所定の手続きと審査を経て製造販売認証や承認を受けた後に保険適用申請を行う必要があります。この保険適用申請の審査が行われて保険適用の対象となるまでの期間にその医療機器を使用する場合は患者さんが全額自己負担しなければならず、経済的に大きな負担となります。経済状況によっては、保険適用される他の治療法しか選択できないこともあるでしょう。
これまで、乳がんで乳房内の乳腺(mammary gland)を全摘(total removal)した患者さんが人工乳房(breast implant/mammary prosthesis)を使った乳房再建術(breast reconstruction)を受ける際の費用は自己負担で100万円程かかっていました。今回(6月12日)、厚生労働省(Ministry of Health, Labour and Welfare)の中央社会保険医療協議会(Central Social Insurance Medical Council)がこれを保険適用の対象にすることを了承し、所定の要件を満たせば人工乳房に7月から保険が適用されることになったそうです。
人工乳房を使った乳房再建術を受ける患者さんにとって大幅な負担軽減になり、従来から保険適用対象となっていた自分の組織を移植する乳房再建術に加えて患者さんの選択肢が増えることになります。
米国食品医薬品局(FDA)の英語のウェブサイトによると、現在米国で販売が認められている人工乳房には二種類あり、いずれも外側はシリコーン(silicone)製で中に入っている物質が異なるそうです。今回保険適用が認められたのは昨年9月に国内で承認を受けた米国製の人工乳房ですが、今後日本でも人工乳房の選択肢が増えることが期待されます。
日本の乳がん発症率は年々増加傾向にあり、年間約6万人が乳がんを発症すると言われています。乳房切除(mastectomy)によってがんを治療するだけではなく、乳房再建術の選択肢が増えることにより切除後の患者さんのQuality of Life (QOL)の向上につながる大きな一歩と言えるでしょう。
コラム担当者紹介
医療機器メーカーで実際に申請・治験業務に携わった経験を生かし、申請・治験業務担当者がどれほど厳しい状況の中で即戦力となる翻訳を求めているかを身をもって知っている者として、当局に受け入れて頂ける完成度の高い訳文をお届けできるよう、医療分野や薬事動向に常に目を向け、現場の皆さまのお声を聞かせて頂いております。 また、大学で学んだ言語学の分析手法や翻訳・編集の会社での経験に基づき、自身の訳文が曖昧さのない、用語の整合性がとれたわかりやすいものとなっているか、批判的に多方向からのチェックを行い、最善の状態で納品させて頂くことを念頭に置いております。
株式会社高橋翻訳事務所
医学・薬事申請翻訳、看護・介護・医療翻訳 担当:Y.O.
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