![医学翻訳](https://stat.ameba.jp/user_images/20120210/18/t-honyaku/49/ac/p/t02200169_0300023011785701963.png?caw=800)
ヘマグルチニンとシアル酸の相互作用を抑えるか、あるいはノイラミニダーゼの活性を抑えることによって、インフルエンザウィルスの増強を抑えることができます。実際ノイラミニダーゼの阻害薬が抗インフルエンザウィルス薬として開発され、実用化されています。それがザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)です。
ノイラミニダーゼはN-アセチルノイラミン酸などのシアル酸とほかの酸との結合を切断する酵素です。2, 3-ジデヒドロ-2-デオキシ-N-アセチルノイラミン酸(DANA)という化合物はN-アセチルノイラミン酸と形がよく似ており、1974年にノイラミニダーゼの活性を阻害することが発表されていました。この化合物が標的物質であるノイラミニダーゼに対して阻害能を発揮するのは、ノイラミニダーゼによる糖鎖の分解反応の過程で生じるシアル酸の遷移状態の分子構造に似ているため酵素が間違ってDANAと結合してしまい、本来の糖鎖の分解ができなくなってしまうからです。その後、X線結晶構造解析によって明らかにされたノイラミニダーゼと、それに結合するN-アセチルノイラミン酸やDANAの立体構造をさらにコンピュータで詳しく解析することによって、より強力なノイラミニダーゼの酵素活性阻害能を有する化合物の探索と開発が行われました。その結果、1989年代にビオタ社(オーストラリア)がDANAの誘導体であるザナミビルを開発しました。この化合物の権利はグラクソ・スミスクライン社(GlaxoSmithKline:イギリス)に供与され、関井で初めてのノイラミニダーゼ阻害薬として商品化されました。ザナミビルはインフルエンザウィルスに対する阻害能がDANAより高くなっていました。これは、副作用がより少ない優秀な化合物であることを示しています。
また、1996年にギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences:米国)は、ザナミビルと同等の阻害能を有するオセルタミビルを開発しました。オセルタミビルはその後ロシュ社(スイス)で商品化され、抗インフルエンザ薬として利用されています。オセルタミビルは、口から摂取することが可能となり、この点で口から摂取できず吸引器具が必要なザナミビルよりも改良が施されているといえるでしょう。