![医学翻訳](https://stat.ameba.jp/user_images/20120210/18/t-honyaku/49/ac/p/t02200169_0300023011785701963.png?caw=800)
たとえば、イレッサ(Iressa)という制癌剤があります。ちょっと背景から説明すると、正常な体内にはEGF(上皮成長因子:Epidermal Growth Factor)という増殖因子が微量に存在していて、細胞膜にある受容体タンパク質(EGFR)に結合して作用を現します。癌細胞の多くはこのEGFRをたくさん作るため、EGFがよく反応して増殖が盛んになります。ところが、EGFR遺伝子は患者によってSNPの違いがあり、そのために効果や副作用に個人差があることがわかりました。あらかじめ患者のSNPを調べておけば、有効な患者や副作用が出そうな患者の見当をつけることができます。
同様に、イリノテカン(irinotecan)という制癌剤は、DNA複製(DNA replication)のところで働くトポイソメラーゼ(topoisomerase)の阻害剤(inhibitor)で、大腸癌などに対してなかなか有効な薬ですが、まれに患者が死に至る大きな副作用が出ることがあります。しかし、副作用の強い患者には、イリノテカンの代謝酵素(irinotecan metabolizing enzyme)のSNPに特徴があることがわかり、事前にこれを調べて使用を判断するようになりました。最近では、「治療に必要な薬ではあるが、致死的な副作用が出る恐れがある」という場合、使用禁止にするのではなく、患者のSNPを調べてから使うということが可能になりました。