Funding, Financing and Fund Raising
今回もクイズで始めてみましょう。
Fundingも、FinancingもFund Raisingも、日本語に訳す時は「資金調達」とするか、または、それぞれ「ファンディング」、「ファイナンス、ないしは、ファイナンシング」そして「ファンドレイジング」などと、片仮名表示されることが多いのですが、英語で使われる時には、そのコンテクストが違っています。
ここで質問です。
次の3つの文章は、それぞれ「資金調達」という言葉を使っていますが、英文ではFunding、Financing、Fund Raisingのどの表現が一番適格でしょうか?
1-プライベートエクイティ運用会社である、ABC Partners LLCは2010年10月に、ABC Buy-Out LP 3号ファンドを立ち上げ、50億ドルの資金調達を行うことを発表した。
2―TT電気株式会社は、タイと中国の半導体工場拡張のための資金調達として、2010年10月に、100億円の転換社債を発行することを発表した。
3-SS銀行は、JJ航空への緊急融資のシンジケートローンに参加するために、コール市場と手形市場で、100億円の資金調達をした。
いかかでしたか?今回のクイズはやさしいですね。
FundingとFinancingは重なるところも多く、結構混同しやすいのですが、多くの場合、使われるコンテクストや資金調達をする主体が違います。基本的には、Fundingは金融機関が特定の運用目的のために、比較的短期の資金を金融市場から調達する場合に使います。ですので、銀行が預金を集めて運用資金にする場合には、Fundingとはいいません。一方、Financingは、主に事業会社が債券市場や株式市場で、比較的長期の資金調達を行う場合に使います。もちろん、銀行を始めとした金融機関が転換社債や新株を発行して資金調達を行う場合には、FundingではなくFinancingを使います。事業会社が銀行からの借入を行って資金調達をする場合はFinancingではなく、Borrowingを使いますが、時折、広義の意味のFinancingが使われているケースも見かけます。特に、シンジケートローンでの借入を行う場合には、Financingがよく使われます。
ただ、Fundingを使うか、Financingを使うか微妙なコンテクストもいくつかあります。例えば、事業会社がCPを発行し、CP市場から資金調達を行う場合は、Fundingでしょうか、Financingでしょうか。個人的な感覚としては、事業会社の資金調達なので、FundingよりもFinancingを使いたいのですが、むしろRaising MoneyやRaising Fundなどを使うほうがぴったりくる気もします。
では、Raising Fundが出てきたところで、並びが逆の、3つめのFund Raisingが使われるのはどのようなコンテクストでしょうか。Raising Fundの”Fund”は「資金(money)」という意味ですが、Fund Raisingの”Fund”は、文字通り「ファンド」です。つまり、ファンド運用会社が、新規にファンドを設定し、そのファンドへの出資者を募ることをFund Raisingといいます。そのため、ファンドを投資家に「はめ込む」というニュアンスもあるため、Placementという表現もよく使います。ファンドへの出資者を募ることを専業としている業者のことをPlacement Agentともいいます。
fund, funding, finance, financing, raising fund, fund raising, borrowingなど、金融関係の文献には頻繁に登場する言葉ですが、日本語の「資金」や「資金調達」に対して、そのコンテクストによって、様々な英訳を想定しておくことが必要でしょう。
クイズの答えは、1,2,3の順に、Fund Raising、Financing、Fundingです。