その覚悟はありますか ―死刑制度― | あづまの書斎

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基本的には私が読んで面白かった本のご紹介です。
時々、時事や身の回りの出来事なんかもお話させていただきます。

千葉法相の死刑立会いから刑場公開と、かつて、我が国の死刑制度に関わる話題がここまで採り上げられた事もなかっただろう。

私自身は、死刑制度については反対とも言わないけど賛成と言うつもりもない。

あくまでも仮定の話しだが、自分自身の手で死刑囚の首に絞首用のロープをかけ、目の前で死刑囚がぶらさっがって絶命したとしよう。
私は死刑囚の肌やロープの感触をいつまでもしつこく覚えているだろうし、目の前でぶら下がった死刑囚の死に様を夢で見てうなされる事になるだろう。
被害者やご遺族の無念を考えれば、軽々に死刑反対と言う事もできないが、いざ『賛成ならば自分の手でやってくれ』と言われれば、それも私にとっては到底無理な話しである。

現状、日本においては死刑の執行は刑務官に代行してもらっている(しかも、死刑執行を刑務官の職務範囲とする法的根拠は無いらしい)。
私にとって死刑制度に賛意を示す事は、自分ではやりたくない事を人様に押し付ける事となるので、今後も死刑について明確な、積極的な賛意を示す事は恐らくないだろう。
逆に、被害者やご遺族の心中を推し測って反対を唱える事もできず、今後も死刑という制度が存在する事実と粛々と執行されていく現実をただ呆然と見つめる事しかできないのだろう。

《書籍ご紹介》

 

 

フランス革命当時の死刑執行人、シャルル‐アンリ・サンソンの生涯が、その暮らしぶりや周囲の人物との関わり、そして『処刑』に際してのエピソードを交えて書かれている。

死刑執行の職務が世襲制であったことや当時の処刑の実態など、当時の風俗の一面を知る事ができると共に、本書では英明な君主として描かれているルイ16世の人となりやギロチンの発明のきっかけなど、フランス革命を別の視点から考えるきっかけともなる。

処刑が明確に職務と定められていながらも、死刑囚に可能な限り人間的な配慮をし、そして処刑そのものに苦悩するサンソンの姿は印象的。

死刑制度については、被害者と加害者、そして裁判に関わる人たちという視点で語られる事が多いが、本書のように死刑制度の『実際の担い手』について触れられる事は極めて少ない。
ジャイロ・ツェペリ が描かれていた(描いたのはもちろん荒木飛呂彦先生!)帯紙に釣られて買った本ですが、大変勉強になりました。