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真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

表彰式の合間に、消防団の偉い人の訓示が行われた。団員たちは、全員起立して先輩の言葉に耳を傾けている。

 

 

 

続いて、残る表彰式が行われた。こちらも団に対する表彰で、代表の4人が壇上に上がって市長と敬礼を交換している。

 

 

 

 

訓示を挟んで表彰を受けたのはこの団だけで、どうやら特別表彰だったようだ。これで全ての表彰式が終わり、いよいよ出初式はクライマックスである。

 

 

 

演台には市の偉い人たちが次々に登場し、消防団員たちに言葉を贈って行く。

 

 

 

 

県からゲストとして招かれている、貴賓席の人からも消防団員に対する激励の言葉が贈られる。自分たちの地域以外の人からも応援されていると思うと嬉しいに違いない。

 

 

 

最後に、貴賓席を含む全ての参加者が、舞台上の国旗、市旗に向かって敬礼。

 

 

全員で万歳三唱をし、閉式と相成った。

 

 

広い遠野市で、普段はそれぞれ地元で活動している消防団員たちが、市民の代表として心をひとつにする瞬間である。俺はラグビーという団体競技をやっていたからか、スポコン的な感覚かもしれないがこういった瞬間はとても好きで、同じ瞬間に立ち会えたことは素晴らしい経験だった。

 

消防団表彰は、勤続年数が長い人だけでなく特に顕著な功績があった人に対しても行われる。ベテラン団員は後輩への指導や団の発展への貢献で表彰されることが多い。

 

 

 

勤続年数の表彰は、これも自治体によってまちまちだが5~10年の区切りで最初の表彰を受けることが多い。

 

 

 

 

 

本来、体力に勝る若い団員が増えることが消防団の安定した活動に繋がるのだが、遠野市でもなかなか若い団員の確保は課題であるようだ。勤続表彰は団員たちのモチベーションにも繋がる筈で、団員たちの活動が報われるような取り組みを市も一層推し進めて欲しい。

 

 

 

団として災害現場で素晴らしい活躍をしたりすると、それも表彰される。団の代表者である何人かが壇上に上がり、現場での活躍や、団としての防災への積極的な取り組みに対して表彰状が贈られる。

 

 

 

 

消防団員も人間なので、自ら望んで地域貢献を行う立場に就いたとはいえ、実際に活躍すればそれだけ認められるのは励みになる筈だ。最前線で人々の生活を守る消防団の姿を見て、自分も消防団に入りたいという若者が増えると良い。

 

ステージの幕が上がり、出初式のトリである功労者の表彰式が始まる。

 

 

市長、そしてベテラン団員たちが、普段地域防災の最前線で活躍する団員たちに敬礼。続いて市長の訓示があり、その後表彰式に移行する。

 

 

 

先ずは、勤続年数が長い団員が壇上に呼ばれ、市長から表彰状が手渡される。団員も感無量の表情で、市長と敬礼を交換してステージを後にする。

 

 

 

 

消防団員の勤続表彰は、特に何年ごとに行うなどの決まりはなく自治体によってまちまちのようだが、一般に勤続30年の節目や、勤続25~30年且つ50歳以上で人格なども優れていると認められた団員が表彰されることが多いようだ。

 

 

 

勤続表彰は個人表彰であり、ひとりひとり名前が呼ばれて市長から表彰状が贈られる。団員にとっては最も誇らしい瞬間ではないだろうか。

 

 

 

 

 

女性の団員も、一般に勤続10年且つ婦人消防団の発展に貢献したと認められた人に対する表彰などがある。近年では、仕事や家庭と団の活動を両立する女性も増えており、前線だけでなく他の団員のサポートなど、男性にはできないかたちで活躍する女性団員が今後も増えて行くだろう。

 

 

 

 

 

続いて、ベテラン団員程ではないものの長く消防団で活躍した人や、組織として活躍が認められた団に対する表彰がある。まだ表彰式は盛り上がりそうである。

 

消防出初式のゴールである市民センターには、全ての消防団員が集っている。

といっても、あれだけの人数がひとつしかない入り口から入るので、かなり詰まっていたようでまだ外で待っている団員がたくさんいる。

 

 

団員は受付があるが、その他の見学者は実質フリーパスだ。

 

 

ホール内の客席に、各地域から集まった消防団員が着席して行く。まだ席に空きが多いが、ホールに入るのに時間が掛かっている団員がまだ大勢いる。

 

 

 

後方の席は、僅かながら一般の見学者用に開放されている。俺の他にも何人か、表彰式までフルで見学したいという人が来ているようだった。

 

 

 

場内は暫くざわついていたが、やがて全ての団員が着席することが出来、市長が壇上に立って表彰式開会の挨拶を述べた。

 

 

俺のすぐ横に陣取っていたラッパ隊が、開会のファンファーレを演奏した。

最初は何故このような後方にラッパ隊がいるのかと思ったが、ホール全体に奇麗に音を響かせるため、このような位置取りになったのだろう。

 

 

此処からは、長年消防団に貢献した団員に対する表彰が行われる。地域への貢献として最も目に見える形であるから、彼らも誇らし気に登壇するだろう。

 

消防団員が全員通過した後の交差点には、消防車が続々と集まって来た。

恐らく、遠野中のほぼ全ての消防車が市街地に集結しているのだろう。

 

 

一般的に想像する消防車(所謂ポンプ車)から、自車に水槽を搭載したポンプ車、救助工作車、指揮車など……あらゆる種類の消防車が大集合だ。

今回は来ていないが、市には他に高規格救急車と呼ばれる、簡単に言うと普通よりもスゴイ救急車も数台備えられている。

 

 

 

 

 

 

消防車たちも市民センターの駐車場に向かっている筈だが、全ての車両が一ヶ所に集中すると渋滞が起きてしまうためか、交差点をそのまま直進する車両の他に、たまに左に曲がる車両も現れ始めた。

 

 

たまに消防団員が交差点の中央に立ち、車両をどちらに向かわせるかを指示している。

 

 

 

しかしそうしているうちにも、消防車はどんどん民話通りに集まり、既に後方では渋滞が起こっている。

勿論車両間で連携を取り、一定のスピードで停滞なく走っているためトラブルにはなっていないのだが、最早数台を別の道に向かわせてもどうにもならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

これだけの数の消防車を一度に見ることはまずないので、この日にしか拝めない光景ではある。同時に、市内の各地域にこの消防車たちが配備されていると思うと安心感もあり、パレードは市民に「消防団は何処にでも駆け付けられる体制を整えていますよ」ということを伝える役割も果たしているのかもしれない。