遠野放浪記 2015.12.26.-01 上野発の新幹線 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

2015年も後数日で暮れようかという或る日の晩、我々は馴染みのインド料理屋で、骨付き山羊肉のカレーターキーの脚を食べていた。これがこの年、東京でいただく最後の夕食だった。

 

 

 

写真を見ておわかりいただけると思うが、とてもひと晩で食べ切れる量ではない。ということで、翌朝の食事も骨付き山羊肉のカレーになるのだった。

 

朝早く、まだ太陽の光の予兆すら感じられない真っ暗闇の中、我々は本郷の家を出て、上野駅に向かった。

今ではかわいいブタ家の年末恒例行事(?)になったが、嫁と一緒になってから年末の遠野へ足を運ぶのは、この年が初めてだった。

 

 

金を持っている一部の人間は、速い新幹線で盛岡まで向かった後、はまゆりの指定席に座って遠野を目指すのだろうが、我々は遅い新幹線の自由席でのんびり新花巻まで向かう。急ぐ旅でもないし、我々のペースはこれで良い。

 

 

 

幾ら遅いと言っても、新花巻まで3時間程度で到着する。

この年の岩手の冬は暖かいらしく、殆ど雪が無いようだ。

 

 

 

釜石線を見下ろす新幹線のホームから下界に降り、さっき見ていたホームから汽車に乗り換え。

 

 

 

20分と少々で、今日の最初の目的地である宮守に到着する。

 

 

嫁と一緒に宮守に足を運ぶのは初めてだが、俺は宮守が大好きなので、その一端でも感じ取って貰えると嬉しい。

 

 

 

 

朝9時台の宮守駅で、我々と一緒に下車した客は数人だけ。彼らも足早に駅を出て行ってしまった。

誰も居なくなったホームに、少し冷たい風と透き通る日差しが静かな音を奏でている。

 

 

信号機のモニュメントに掲げられた鐘を鳴らす。澄んだ音が宮守の街に響き、そして冬の風に掻き消されて行く。

我々もそろそろ駅を出て、街を歩くことにした。