遠野放浪記 2015.09.19.-16 夜想 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

長丁場の祭りを朝から見学し続けていた我々は、ひと息入れるために駅前のカッパの店を訪ねた。カッパ独りでは遠野の人口に匹敵する見物客を捌き切れないのか、メニューが何時もよりも絞り込まれていた。

我々はソフトクリームをひとつずついただき、短い時間ではあるがカッパと談笑してから店を出た。

 

 

 

この後は、定宿の御主人が駅前まで迎えに来てくれることになっている。

建物から出ると、其処には夜の出番を待つ鹿頭が並んでいた。中の人たちは何処に行ってしまったのだろうか。

 

 

 

陽が沈むか沈まないかという時間帯になり、迎えの車が来てくれた。暮れる遠野盆地を抜け、高清水の中腹にある宿へ向かう。

 

 

 

今週末は県内外からの見物客で満室のようだが、多くの人は夜まで祭りを見学してからゆっくり車で来るつもりなのか、未だ我々以外の客は到着していないようだった。

エントランスで暫し話し込んだ後、一度部屋に移動。

 

 

日が暮れてから晩ごはん、夜の部のパレードに出掛けることにしているが、未だ時間があるので少し休める。

一度荷解きした後、CocoKanaで食事したときにいただいていた結婚祝いを開封して見る。入籍してから嫁と一緒に遠野の知人たちに会うのは初めてなので、方々から祝いの言葉を掛けていただいたり、こんな贈りものまでしていただいた。

勿論、第一には嫁への心遣いをいただいているわけだが、俺も俺なりに遠野に通い続けた8年弱が間違ってはいなかったことを感じられ、遠野に出会わせて下さった神様と遠野の全てに感謝する。

 

 

贈りものは、真紅の花皿だった。かなり良いモノではないだろうか。刺身や一品料理など、一寸良いことがあった日の食事に是非使おう。

 

 

そのうちに空が暗くなり、再び街に下りる時間になった。

我々は駅前まで送っていただき、Deんに入った。独り身の頃から何度も助けられている女将は、俺の遠野のボスに他ならない。

何時ものカウンター席の端に案内していただき、サワーで乾杯した。

 

 

お通しはピーマンと炒りしらす。お通しが美味い店は、本当に良い店なのだろうと思う。

 

 

旅先では肉ばかり食べがちなので、サバときのこのサラダでバランスを取る。俺は冷静にバランスを取る判断が出来る男だ。

 

 

そして名物の唐揚げ。以前から何度も明言しているが、Deんの唐揚げは唐揚げに理想のかたちがあるとしたら、それに最も近い唐揚げだ。

初めてこの店を訪れ、宗教上の理由で唐揚げが食えない人以外は、何を置いても先ず発注して見るべきだ。

 

 

さらに、メニューを眺めていたらピザがあるのを発見したので、発注して見る。ただのピザではなく、遠野の食材が散りばめられた、遠野でしか食べられないピザだ。

チーズ、そしてザーピー好きの俺が今までこれの存在に気付いていなかったとは不覚だ。期待通り極めて美味い。

 

 

これだけ美味い料理が尽きることなく出て来るのだから、幾らあまり酒に強くない俺とて気付けば何杯かグラスを空にしていた。段々と頭がふわふわして来るわけだ。

 

 

締めにチャーハンをいただく。素朴な味が、酒に塗れた後の身体にとても優しい。

 

 

食事を終えて何時頃街に出ようかと思案していると、夜の鹿踊りの門掛けが店の玄関で始まった。丁度居合わせた客の子供が鹿の姿を見て大泣きしてしまい、ボスのお母さんが頑張ってあやしていた。

もの凄くカオスな情景だが、同時に懐かしい遠野の夜の情景だとも思えて、これから少しだけ続く時間が楽しみなのだ。