遠野放浪記 2015.08.16.-02 夏の晴れ上がり | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

長い山道が終わり、漸く足がひと息吐く。雲間から差し込む太陽の光が、暑い一日の始まりを告げていた。

 

 

 

まだ早い時間だが日差しは強い。

このあたりにいた猫たちは、この暑い中で何をしているのだろうか。

 

 

高清水に登るときにはこの場所で地上に別れを告げ、そしてまた降りて来たときにはこの場所で地上に帰れたことを喜ぶのだ。

 

 

 

 

 

幾つかの木陰を抜けると、出し抜けに放牧中の山羊が現れた。

以前附馬牛でも電柱に繋がれた山羊を見たことがあるが、遠野の人には山羊をそのへんに放牧する習慣でもあるのだろうか。

 

 

 

 

 

見たところこの山羊も、近くの木に紐で繋がれているだけで、特に整った環境の放牧地にいる訳では当然ない。道端に生えた草を好き放題に食べている。

あまり人が通ることもない場所だということで、山羊も安心出来るかたちで放牧に出されているのだろう。山羊は我々の顔を見て少し緊張した様子を見せていたが、またすぐにのんびりと草を食べ始めた。

 

 

 

さらに街に近付くと、道に色取り取りの花が見られるようになる。遠野の人は(特にこの綾織周辺では)よく花を育てるのだ。

花だけでなく、夏の野菜もすぐ手が届きそうな場所に生っている。

 

 

もう道はすっかり平坦になり、完全に山の世界を脱出した。半日以上高清水で過ごした思い出は、今や遥か彼方である。

 

 

 

綾織の街は明るく、既にじりじりとした光で地上が熱せられている。山道を歩き終えた安堵感からか、今になってどっと汗が噴き出して来た。