遠野放浪記 2015.08.15.-06 スポットライト | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

昼ごはんには、独り身の頃からときどき旅先で食べているスープの缶詰を、ごはんと一緒にいただいた。本来牛乳で伸ばして食べるものだが、ごはんと食べるとドリアのような感じになり、これはこれで美味い。

 

 

他に、一時期流行っていたアジア料理の缶詰も食べた。麻婆豆腐やタンドリーチキンといったエスニック料理が詰まった缶詰で、結構好きだったのだがこれ以降見掛ける機会はない……。

 

 

午後になると、遠野の上空に雲が掛かり、太陽の光を隠してしまった。唯一、八幡から土淵に抜けるあたりの一角だけが、スポットライトを浴びているかのように明るい光に照らされている。

 

 

 

土淵の奥にも、一ヶ所陽だまりのように明るいところがある。あの場所からこちらを見上げるとき、其処にはどのような景色が映って見えるのだろうか。

 

 

 

綾織方面は明るいようで、また山小屋がある高清水の山頂付近にも、暖かい日差しが届いている。

 

 

 

 

暫く地上を眺めていると、漸く雲が遠野の上空から移動し始めたか、土淵のほんの一画だけに当たっていた光が次第に大きくなって行った。

 

 

バイパスの遥か先、青笹から上郷に掛けても、薄っすらと明るくなっているのがわかる。

 

 

パラパラと起こっていた拍手がやがて大きなうねりになり、遠野盆地という舞台の隅々まで広がり行くように、頼りなく見えていた光は次第に大きな束になって遠野に集まりつつある。

 

 

光はどんどん大きくなり、土淵一帯はほぼ晴れ上がった。

 

 

遠野の中心街にも次第に光が広がりつつあり、そのうちに完全に晴れ上がることも期待出来るだろう。

 

 

さっき昼ごはんを食べたばかりだというのに、山の上で過ごす時間はとてもエキサイティングで、すぐに小腹が減る。俺はリュックに詰めて持って来たおやつを取り出し、嫁と分けて食べることにした。

 

 

そしておやつを食べ終えると、嫁は昼寝を始めた。俺もやることはないので、暫くのんびりと遠野に降り注ぐ光の移り変わりを眺めることにした。