遠野放浪記 2015.08.15.-07 邪念は持たない方が良い | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

午後になり、少しずつ日差しがじりじりと、遠野盆地全体を透明な熱で包み始めた。上空の雲は晴れ、下界に影はなくなっている。

 

 

 

 

田園の鮮やかな緑が、夏の西日に照らされて僅かに揺らいで見える。

 

 

 

 

また暫くすると、北東の山の向こうから暗い雲が近付いて来るのが見えた。遠野の夏らしいと言えば夏らしい空模様で、夜になると天候が不安定になる傾向があるが今日は大丈夫だろうか。

 

 

 

地上に再び黒い影が落ち、その僅かな場所にだけ差す太陽の光が絶えず形を変え続ける。

 

 

 

 

 

白望山を望む空は霞に覆われ、山の稜線すらはっきりとは見えなくなっている。そしてその霞を切り裂くように、ひと筋の虹が雲に向かって延びている。

 

 

 

 

 

 

頼りなげに見える七色の光が、荒れ狂う雲の中に身を投じる姿を見て、日常とは違う場所に来たことを実感する。