遠野放浪記 2015.01.11.-17 はじめてのチュウ | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

校舎と正対する体育館は、昔ながらの木造建築でありながら、人の手を離れて5年間の風雪に耐えてその姿を留めている。

体育館そのものに思い入れがある人がどれくらいいるのかはわからない。個人的な思い出をひとつ挙げると、あれは幼稚園の卒園式の日。大した実感もなく体育館の扉を開けると、同級生たち全員がぐるぐると円を描いて走り回っていた。あれが何を意味していたのかは今、大人になってふと思い返してみると、理解出来る気がする。

 

 

 

気が付けば太陽が山の影に隠れ、いよいよ日没の時間だ。風も出て来て、かなり肌寒くなって来た。

 

 

そろそろ引き上げよう。しかしこの校舎が姿を留めている限り、俺はたまにでも足を運びたい。そして実は宮守の心の拠りどころであったかもしれない、もう人の声が響くことはないこの場所に、鎮魂の祈りを捧げるだろう。

 

 

 

 

分校から元来た道を下ると、再び太陽が森の上に見えるようになった。先程よりも濃い影が雪原に横たわり、夜の活動を始める準備に勤しんでいる。

 

 

 

 

山に挟まれた宮守の街には、最早太陽の光は届いていない。此処から急激に気温が下がり、道に積もった雪はさらに固くなるだろう。

 

 

そんな道の一角だけ雪が無くなっており、宮守村の時代からデザインそのままのマンホールが顔を出していた。

2羽のウグイスがチュウをしている。ウグイスは村の鳥で、下に描かれているヤマユリは村の花だった。

 

 

たまに車が通るだけの寂しい釜石街道を歩き、道の駅に向かう。

 

 

めがね橋が見えて来た。この橋を越えると、急に暖かな空気に包まれたような気になり、宮守の街の賑わいもすぐ近くに感じられる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

この時期は遠野に戻る汽車が来るまでに真っ暗になるので、ライトアップを見て行く時間もある。久し振りなので楽しみだ。