遠野放浪記 2015.01.11.-13 影に追われる | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

釜石街道に出て、何となしに分校の方へ歩みを進める。途中、車とも人ともすれ違うことはなかった。

 

 

山裾は完全に日陰である。それ程雪が積もっていないため、その上を頑張って自転車で走った人がいるようだ。夜になると道が凍り、自転車の轍がそのままカチカチになるだろう。

 

 

道を外れると、四季様々な表情を見せる田園へ。今は真っ白な雪に包まれ、人が入ることも殆どないため、全ては冬に眠るままである。

 

 

 

斜面にはくっきりと光と影の境界が形作られ、吹き溜まりの下の僅かな影の中に、夜の闇がある気がした。

 

 

雪が積もってから、この道を歩いた人がいるようだ。ただしそれは恐らく何日も前のことで、足跡は強い風に晒されて消え行こうとしている。

 

 

 

 

少し太陽が雲の影に入ると、さっと世界に暗幕が降りたようにあたりが暗くなる。

 

 

 

冬の世界、一面白のスクリーンに映し出される幻影は、秒単位で目まぐるしく表情を変える。冬は沈黙の季節だなんて、誰が言ったのだろうか。一度この場所で、何もせずただ立っていてみれば良い。

 

 

 

 

川の土手は流石に少し雪が溶けていた。このまま土手を回って行ってみようか。

 

 

 

 

元来た道を振り返ると、このような雪まみれの道にも歩く人がいるのか、たくさんの足跡が付いていた。

俺の足跡だった。

 

 

世界は狭いようで広く、広いようで狭い。