遠野放浪記 2015.01.11.-02 パレード | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

市長の号令が下ると、校庭に集結していた消防団員たちが続々とパレードに出発して行った。先陣を切るベテランの団員たちは、それぞれ立派な団旗を掲げて行進している。

 

 

 

 

年に一度のパレードだからか、ベテラン団員といえど慣れているわけではなく、段取りに梃子摺っている様子が見られる。団員たちが校庭から出た後には消防車も控えているため、全員が出発するまでには相当時間が掛かりそうだ。

 

 

 

俺は取り敢えず先頭集団に付いて行くことにした。

 

 

小学校から市街地に出る道はあまり広くないため、大勢の消防団員が大挙して詰め掛けるとあっという間にぎゅうぎゅう詰めになる。しかし其処はチームワークが命の消防団員たち、渋滞することなくスムースに街へと繰り出して行く。

 

 

 

 

行進にはブラスバンドやラッパ隊も加わっており、勇壮な音色を響かせている。

なり手がいない場合を除いて殆どの消防団がラッパ隊を設置しており、中にはラッパを吹くことに憧れて消防団に入る人も多いという。

 

 

暫く学校の前の道でパレードが出発して行くのを見守っていたが、ラッパ隊に付いて行くのも面白そうなので、既に先へ進んでいるラッパ隊を追い掛けることにした。

 

 

 

消防団が吹くラッパは、トランペットなどと違い単なる金属の管をラッパ状にしただけという極めてシンプルな構造で、奏者の息遣いによってのみ音階を奏でることが出来る。強い息を吹き込む程高い音を出すことが出来、肺活量に優れた奏者程出せる音のレパートリーが増える。

何故ラッパがメインなのかというと、元々騒がしい状況の中でも聞き取り易いラッパの音は古来行軍の信号として用いられ、時代が下っても火災現場など緊迫した現場での号令伝達手段として用いられたことが、ラッパ隊という形で残っているのだ。

 

 

 

俺もジャンルは違えど音楽をやっていたので、シンプルな楽器で美しい音色を奏でることの難しさはよくわかる。防災の文化の中で育まれて来た音楽を聴ける舞台であると考えるのも良い。