遠野放浪記 2015.01.10.-05 白装束 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

冬は人知れず、しかし何時の間にかすぐ近くにまで来ている。気付けば遠くの山々が見えなくなり、次いで地上にも白い冷気を流し込み始めた。

 

 

 

突然の吹雪に襲われ、汽車は途中駅で数分の足止め。幸いすぐに出発出来たが、あのまま風が強くなり続けていたらと思うと、背中が冷たくなる思いだ。

 

 

世界が変わるのに、2分も要らない。冬の東北にそれをまざまざと見せ付けられる。

 

 

 

 

 

峠を越え、宮城県側の方が天候は安定していた。何度も同じ場所を旅しているが、たまにはこういうこともある。

 

 

広大な田園に白いものが占める面積が大きくなって来た。冬は人知れず、しかし何時の間にかすぐ近くに来ているのだ。

 

 

 

東京よりも冬が長い地域であるだけに、その冬の只中に旅をすることは、装飾されていない東北の姿を見に行くことでもある。車窓から見える光景の一秒一秒が、俺の心の奥底の見えない部分に深々と雪を積もらせる。

 

 

 

 

 

それでも大きな街が近付くと、幾分か冬の寂しさは和らぐ気がする。間も無く県南の城下町である白石の中心に辿り着く。

 

 

 

 

白石で汽車から降りてみたり、道中で一番と言って良いくらいに好きな駅である東白石に念願叶って訪れたこともあった。全く知らない街、というのは少しずつ減って来てはいるものの、それはそれで寂しい気もしてしまうのである。