南東北の端は、ただ広い田園と小さな山々が織り成す風景があるのみである。小さな家や集落が現れては消え、その後に現れるのはまた昔から其処にある風景だ。
美しい空、真冬の水田、未だ雪を被らない山。東北の大地に抱く愛情は痛い程に切ない。
何時も車窓から見えて気になっている、この大きな建物は何なのだろう。
ラクダの背のような丘に集落があり、神社の森があり、生活の糧がある。
段々と車窓に見える山が険しくなって来た。雲に隠れた空の彼方に、白い雪を被った、人を寄せ付けない高峰が聳えている。
高く高く飛び立つ鳥たちが見えた。叶うならば、翼が欲しい。
「花の駅」松川を過ぎると、県庁所在地の福島はもう目の前だ。
とても広い荒川とその河川敷を見ると、福島駅に辿り着いたことを実感する。俺の中では、福島の象徴的な風景だ。
光が差し込むホームでひと息入れたいところだが、仙台行きの汽車はすぐに出発する。あまり休憩している暇はない……。
幸い仙台行きの汽車は空いていたので、車内で彼女が持たせてくれたおやつを食べながらのんびりと車窓の景色を眺めることにする。
今日のおやつは、盛岡の名店タルトタタンのレモンケーキ、ミルクまんじゅう、へっチョコまんじゅう……とても甘い。長旅にはとても助かるお供である。
遠く離れていても岩手の味を感じながら、俺の旅はそろそろ後半戦である。