遠野放浪記 2014.11.24.-02 名手が歩いたかもしれない道 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

水沢の街を抜ける通りは一直線で、早朝の冷たい空気の中を走っていると本当に気持ちが良い。

 

 

道端に白山神社が鎮座しているのを発見した。頭上には赤い柿の実が幾つか生っていた。

 

 

小さな祠であるが、この通りを行き交う人の心の拠りどころなのであろう。

 

 

 

街外れに近付き、心なしか建物が少なくなって来た気がする。建物と、刈り入れが終わった稲田が混在し、岩手の郊外らしい景色に出会える。

 

 

 

 

東の空に昇る太陽は次第に高度を上げ、街を覆っていた薄紅色の光は次第に透明に変わり行く。

 

 

地上と空とのコントラストが鮮やかだ。赤い林檎の実が景色から見えなくなったとき、岩手は秋から冬へ変わるのだろう。

 

 

やがて道は街を出て、北上川沿いの低地へ下る。此処まで来ると、家の数も一気に減る。

 

 

 

水沢競馬場は北上川沿いにあり、周囲は田園ばかりの非常に長閑なロケーションだ。盛岡競馬場は人里離れた山奥にあるので長閑にならざるを得ないが、水沢は人々の暮らしの片隅に競馬場があり、馬たちの明日を賭けた戦いが繰り広げられているというのが良い。

 

 

近くに遮るものは無いため、人々が暮らす僅かな平地を囲む山々の姿が拝める。早朝の内は、山に掛かる霧が山影だけを浮かび上がらせ、絵画か芸術作品のような美しさなのだ。

 

 

競馬場の近くにも勿論暮らしている人たちはおり、農業を営んでいるのであろう人の家が何軒か立っているが、その他に競馬場の周囲には厩舎があり、その関係者も近くで暮らしているのかもしれない。

 

 

 

岩手の英雄であるメイセイオペラや、トウケイニセイなどに騎乗し岩手競馬の第一人者であった菅原勲騎手も、現在はバリバリの調教師である。早起きしてこのあたりの道を歩いていると、もしかしたら会えたりするようなこともあったりなかったりするかもしれない。