遠野放浪記 2014.11.23.-19 天蓋 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

秋の日暮れは早く、18時にもなれば外は真っ暗である。

夏ならばまだ子供たちが走り回っていてもおかしくない時間帯だが、今は真っ暗闇の中に駅の明かりだけが浮かび上がっている。

 

 

19時前の汽車で遠野を出る。

 

 

今回は、昨晩上郷で夜明かしをし、そして今日には遠野を離れるという、非常に慌ただしい滞在になってしまった。

 

 

 

到着した汽車に乗り、晩秋の闇の中へ走り出す。この年は、この日が最後の遠野滞在になるのであった。年末に向けていろいろ考えてはいたのだが、結局次に遠野に足を運ぶのは、街が真っ白に染まる季節になってからのことだった。

 

 

車窓から見る闇は、夏よりも深い気がする。澄んだ空気に家々の明かりが反射しては消え、そしてやがて宮守の街に差し掛かった。

 

 

 

この時間に、宮守で降りる人も乗る人もいなかった。

そして、汽車は花巻の光の中に到着。

 

 

すぐに本線に乗り換え、まだ少しだけ南へ向かうのだ。

 

 

さらに30分程汽車に揺られ、辿り着いたのは水沢駅。

 

 

初めて降りる駅で、感じる空気も遠野や花巻とは違う。明日この地で、岩手競馬の趨勢を決する最終決戦が行われるのだ。

 

 

 

 

跨線橋からは、駅と鉄道の信号くらいしか見えない。花巻のように街の明かりが闇夜に浮かび上がるでもなく、空気も冷たく静まり返っているように感じる。

 

 

何時の間に時計は20時半を回っており、ターミナル駅でもないホームに人っ子ひとりいない情景が、余計にそう感じさせるのかもしれない。

 

 

駅のエントランスには、県指定の無形文化財である日高火防祭りのレリーフが掲げられていた。これは京都の祇園祭の流れを汲み、300年以上の歴史を誇る水沢の華やかな伝統なのだ。

 

 

今回は、初めて訪れる水沢の街をじっくりと見て回る時間は無いが、いずれ遠野以外の岩手の街にも、もっと触れる機会を持ちたい。