遠野放浪記 2014.11.23.-06 鎮魂 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

村外れの大きな家の裏手に、石の鳥居が立ち裏山へ入る細い道が延びていた。

 

 

最初は何軒かの家があるのかと思ったが、どうやら同じ家の敷地にある家屋や倉庫のようなので、これはかなりの豪農の家かもしれない。街から離れ生活にやや不便があることと引き換えに、広大な土地を持つことが出来る。

 

 

よくこうした農村には、個人で敷地内に御社を構える人がいるが、この道は豪農の私有地という訳ではなさそうだった。

 

 

森の中に祠が見えている。

 

 

朝の日差しにさっと紅色が溶け、山深い里を鮮やかに染める。

 

 

くねくねと細い道を上り、小さな丘の上を目指す。

 

 

やがて斜面にへばり付くように立つ、幾つもの鳥居や祠が出迎えてくれた。

 

 

殆ど平らな場所は無いのだが、このようなところによくこれだけの数の御社を建てたものだ。鳥居の佇まいから、かなり古いものであることが窺える。

 

 

朱塗りの鳥居に守られる小さな祠は、扉が閉ざされていて何が祀られているのかはわからなかった。

 

 

一番奥の御社は大きく、普通の神社くらいのサイズはある。

 

 

社号は八幡宮だ。

 

 

中も広く、一番奥の祭壇に本殿が安置されている。その姿は古い布に隠され、窺い知ることは出来ない。

 

 

これらの御社は、集落を一望できる場所にある。遥か彼方、視界の下の方に見えるのが、先程までいた上郷の街だ。少し歩いただけで、こんなにも流れている空気が変わる。本来この地にあったのは、寧ろ今俺が感じている空気なのかもしれないが。

 

 

さらに崖の縁には、小さな石碑と、それを御大層に囲む赤い囲いと鳥居があった。取り立てて目立たないサイズの石碑をこうも大切に祀るとは、何かとても大切な由来があるものなのだろうか。

 

 

山に近い土地には、不思議なものがいっぱいだ。この旅で幾つの不思議に出会えるだろうか。