暗くなり始めた空に向かって聳えるマルカンデパートの姿が城塞のように見える。その最上階に、食堂の明かりが灯っている。
前回の来訪より少し早い時間なので、昼から夜へ移り変わって行く街の姿が見られる。
アーケードにはあまり人がいない。土曜の夕方ともなれば、街へ繰り出す若者たちがいてもおかしくないのだが……。
まだ酒を酌み交わす時間には少々早いので、これから賑やかになって行くのだろうか。
西の空には赤く焼けた雲が残っている。街の彼方には、北関東から北日本までを東西に隔てる奥羽山脈が連なっている。全長およそ500kmの、日本最大の山系である。
果てしなく深い山々であることが此処から見るだけでもわかる。あの僅かに稜線が低くなっているところが、北上線が走るあたりだろうか。
暫く景色を眺めながらゆっくりしていたが、まだ夕食には早い時間帯であるため、店内は中々混んで来ない。ただ、窓際には学生の団体らしき一団がいたため、俺は静かな内側の席を選んで座った。
今回も食事とデザートを頼んだのだが、両方同時に持って来ても良いかと問われたので良いと答えると、デザートだけ光の速さで運ばれて来た。
今回はちょっと豪華なティラミスパフェにした。ソフトクリームをメインに、コーヒーパウダーやソースが入っていて少し大人の味だ。
食事はナポリカツにした。ソフトクリームと並ぶマルカンの二大名物であるといった噂もあり、県内のコンビニでおべんとうのメニューとしてコラボレーションしたこともある。
見てのとおり兎に角ボリュームたっぷりなのだが、これだけのプレートで当時の値段は¥650だった。現在は流石に値上がりしたが、これでこの価格は激安だ。
早めの夕食を終え、極めておなかいっぱいになった。そろそろ晩ごはんを食べに足を運ぶ家族連れで混み出す頃になり、俺は汽車に乗るために再び花巻駅へ向かった。