遠野放浪記 2014.11.02.-15 未だ夢の中 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

橋の袂に立って振り返ると、半日以上掛けて歩いて来た道が見えた。小さな山里があり、やはりその中で自動車道だけが不釣り合いに見える。

 

 

橋の対岸が釜石街道で、このあたりに来るのは釜石線の駅にひとつひとつ立ち寄りながら海を目指すサイクリングを行って以来だ。

 

 

近くに大きな集落はなく、橋の上から見えるのは川と山ばかりだ。蛇行する猿ヶ石川が山の合間に消えて行く。

 

 

橋を渡り切っても、其処には特に何もなく、時々車が通過していくだけのやや寂しい光景が広がっている。

 

 

道路標識には、北上や花巻といった大きな街と並び、蒻沢への道を示す矢印も記されていた。

 

 

柏木平方面はさらに深い山である。その次の宮守を目指すには、峠をひとつ越えなければならない。

 

 

さて、この後は鱒沢駅に向かいはまゆりに乗るだけなのだが、地図を見ると釜石街道だけでなく、蒻沢側にも猿ヶ石川沿いに沢田橋へ辿り着ける道があることに気付いた。一度走ったことがある釜石街道でなく、未だ行ったことがない道を走って鱒沢駅を目指してみることにした。

 

 

再び落合橋を渡り(この橋もあちらの世界とこちらの世界を繋ぐ扉のように見えて来る)、猿ヶ石川と並行に走る小道へ入った。対岸とは全く違う、実に冒険心が刺激される道が延びていた。

 

 

黄色に紅色にと色付いた木々が道のすぐ脇に迫っている。宛ら峠道の延長戦である。

 

 

森の道は数百メートルで終わり、突然視界が開けて遠野方面の山々が目に飛び込んで来た。3軒程の家があり、僅かな平地で稲作を営んでいる。見通しが良く、対岸の釜石街道のガードレールが遠くに見えていた。

 

 

自動車やトラックが行き交う釜石街道とは全く異なる、静かな暮らしのための道だ。

こんな小さな橋は、たぶん釜石街道にはない。

 

 

駅へ戻る僅か3km未満の道であっても、今までに見たことがないものが見られる。旅人冥利に尽きる時間である。