これ以上釜石線に沿って進む道が無くなったので、一旦集落の上に行くか下に行くかするしかなくなった。
上側の道も魅力的だが、駅に辿り着けなければ本末転倒なので、俺は土地勘がある釜石街道に近い下の道へ行くことにした。
上側の道に上っていたら、山に迷い込んでいた可能性がある。
集落がある斜面はかなり急で、道向かいの山々があっという間に見上げる高さに迫って来る。
集落の中にも、細い道が縦横に迷路のように張り巡らされている。恐らく釜石線と並行するであろう方向に延びる道を見付けたので、このあたりを歩いてみることにした。
日当たりが良い斜面の中腹を歩いて行くと、また釜石線の線路と合流した。
その先に学校の建物が見えて来た。これは甲子小学校だ。
小学校があるこの道の風景には、見覚えがある。もう松倉駅は目と鼻の先にある筈だ。
一旦釜石街道まで下り、直ぐにまた集落に入る坂道を上ると、懐かしい建物が立ち並ぶ風景が見えて来た。
ようやく松倉駅に辿り着くことが出来た。
何処か海の建物を思わせる造形と配色。以前この駅で休んでいると、地元のおばあちゃんたちがやって来て蜜柑をくれたことを、ついこの間のことのように鮮明に覚えている(彼女たちは今も元気にしているだろうか)。
5年振りに古い友人に会うような、気が引き締まる思いだ。












