本殿の裏手に先回りして行列が来るのを待ち構えていたら、程無くして先導の男たちが姿を見せた。
旗手を先頭に、太鼓手、笛吹き、そしてゴンゲサマを掲げた青年が練り歩いて来る。
その後ろに供えものを持った男たちが続き、さらに中学生神輿、子供御輿が威勢良く声を上げながら行進する。
殿を務める鹿踊りの一団は、本当に踊りながら行進して来た。広場で踊るような激しい踊りをそのままに、さらに行列のペースに合わせて周回するのはかなり大変そうだ。
しかし、夏の日差しの下で繰り広げられる扇子の舞は、華やかで美しく、この天神の森だけが天上の世界へ昇華されたかのような夢見心地である。
太鼓手に続き、鹿たちも踊りながらやって来た。ひとりでは踊り切れないとさえ言われる激しい踊りを、参道を3周もしながらずっと踊り続けなければならないのだから本当に凄まじいことだ。
そして、鹿たちが殿だと思っていたら、さらに後ろに妙齢のお姉さま方が続いていた。この人たちは、手踊りを披露する婦人会の方々。俺は鹿が鳥居を出て行くのを見届けた後、勇んで先回りしてしまったが、その後にもまだ出発する人が待ち構えていたようだ。
そのうちに行列の先頭は再び鳥居に辿り着き、2周目に入る前に鳥居の前で踊りを奉納している。
先程のゴンゲサマを掲げていた青年が先頭に立ち、勇ましい踊りを披露している。
ガチガチと歯を打ち鳴らすゴンゲサマの舞は、鹿踊りとは違う迫力がある。背後に踊り手が居るとはいえゴンゲサマは単独での踊りだが、食われてしまいそうな迫力に思わず息を呑む。
しかし彼らはこの激しい踊りの後、すぐに参道の周回へ戻らなければならないのだ。
