遠野放浪記 2014.08.19.-09 安居台 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

静かな集落の片隅に、ひと株の百合の花が咲いていた。


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美しい夏の空と、くっきり映し出された山の稜線。絵画の中の、そのワンポイントになった気分である。

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忍峠の集落に別れを告げ、此処からは附馬牛のメインストリートに合流する。

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此処のところ附馬牛まで足を運ぶ機会が無かったため、その入り口に立っただけでも無性に懐かしい気持ちになる。

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道はやがて猿ヶ石川の右岸に行き当たった。このあたりは舗装もされていなく、砂利が敷き詰められた道だ。

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遠野市街地と比べ、川幅はまだ狭く川面は穏やかである。薬師岳に端を発し、東禅寺川、荒川、達曽部川といった数々の支流と一緒になり、附馬牛は安居台まで旅をして来たわけだ。

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当然というか、河川敷を歩く人は今、誰もいない。

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市街地からもう10km以上離れ、風景は下流から源流へと遡って行く。

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山深い場所で生まれ、美しい夏の風景に育まれて旅をして行く猿ヶ石川と、猿ヶ石川の下流からその生まれ出でた場所へと旅をする俺が、この場所で出会う不思議。

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やがて行く手に小さな橋が見えて来た。対岸へ渡る数少ない道だ。

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川原にも、百合の一群がひっそりと自生している。

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花も人も、皆身を寄せ合って暮らしている。

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道は何時の間にかアスファルト敷きに変わった。こちらからも集落に入って行けるようだ(むしろこちらが主要な道路かも知れない)。

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あの場所で山が一旦途切れ、集落も終わる。この先は附馬牛の真の深淵である。

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遠野物語の序文の道を歩いて来たが、川を渡ってメインストリートに合流すると、その空気も夏の空へ溶けて消えてしまう。午後は気持ちも新たに、附馬牛の最奥を目指す旅が始まる。