遠野放浪記 2014.08.18.-06 微かな光明 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

道は既にほぼ平坦に変わっている。見上げる程高い木々も皆無に等しい。もう新山の山頂が近いことは疑う余地も無い。


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一瞬山の稜線を覆っていた森が途切れ、ウィンドファームの風車が見えた。あそこまで辿り着くにはもう少し走らなければならないようだ……しかし、もう手が届くところまでやって来た。

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こんなところに観光案内の看板が出ていた。この奥には金糞平というところがあり、山桜が名物であるようだ。

金糞とは凄い名前だが、これもマヨヒガ伝説に通じるタタラ場後の遺跡であり(金糞とは製鉄時に出るカスのようなもの)、伝説のマヨヒガが実際には山に隠れ住んだ製鉄民の住居であったことを裏付ける証左であるように思えるのだ。

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古来、鉱山や製鉄所の近くには桜か桂の木を植える風習があったらしいので、山桜も製鉄民の時代からずっとあるものなのだろう。


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金糞平は遠野と大槌の境界あたりにあり、白望山からも訪ねることが出来る。マヨヒガ伝説の立地とぴったり一致する。

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大槌には今でも、大和国高取から移り住んで来た鍛冶屋の末裔だという人が住んでいる。貞任の御膝元である山口や釜石の橋野といった地域では鉄の塊を御神体とする信仰が根付いていて、その中心には白望山がある。

これは今まさに、遠野の伝説のひとつの解に辿り着こうとしているのではないだろうか。

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暫く森の中を進むと、突然視界が開け、全く予想外に一軒の小屋が姿を現した。

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周囲は藪に覆われているが、回り道をして近付くことが出来るようだ。

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近くには建物の基礎であったような土台の跡と、錆び付いた鉄材が転がっている。

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このような場所にこのようなものがあるとは、これはもしかすると……。

俺の胸が俄かに高鳴り、この先に存在している“何か”に対しての期待が否が応にも高鳴りつつあるのを感じた。