遠野放浪記 2014.08.16.-07 何度目かの邂逅 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

汽車は雨に濡れる宮守の街に見送られ、めがね橋を渡って次の峠越えに臨む。


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山の頂上付近は真っ白な雲に覆われ、殆ど何も見えない。まるで山自身から雲が湧き出し、人々の目からその姿を隠しているようだ。

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砥森山裾野の峠を越えると、いよいよ鉄路は遠野盆地へ差し掛かる。柏木平、鱒沢、荒谷前までは旧宮守村の領内だが、二日町からは遂に正真正銘の遠野へ突入である。

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山が生活のすぐ近くにまで迫っている。何処からともなく濃い霧が湧き出し、遠くの山々の姿を隠している……。

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綾織駅を過ぎれば、汽車の旅の終点はもうすぐだ。

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車窓から道の駅の雄大な風車を見上げる。

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釜石街道と猿ヶ石川に挟まれた田園地帯を過ぎ、線路はその猿ヶ石川と交差する。

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河川敷の道が目に入った。初めて遠野を訪れた夜、先代のエリザベス・トンプソンとあそこを走っていて川に落ちそうになったり、釜石街道に戻るべく土手を登ったことを懐かしく思い出す。

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それから間もなく遠野駅に到着。結局、道中一度も青空を拝むことは無かった。

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この時間は釜石行きの汽車と、ひと足先に到着していた花巻行きの汽車が遠野駅で交錯する。

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俺が乗って来た汽車は海に向かって旅を続け、海から来た汽車は峠を越えて旅をする。

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改札を出ると汽車の旅も終わりだ。

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この駅に降りるのはもう何度目になるだろうか。後にも先にもない、一番長い遠野放浪の旅が始まった。