遠野放浪記 2014.08.16.-05 勇敢な旅路 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

仙台を出発した列車はいよいよ北東北へ差し掛かり、途中の街で乗客を降ろしながら北へと向かう。


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小牛田を過ぎれば、後は県内に大きな街は無い。車窓に映る風景が段々、野趣溢れるものになって来た。

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低く垂れ込める雲が去る気配は無い。今日は遠野に着くまでこのままだろうか。

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列車は一ノ関から岩手に入り、盛岡を目指して走り続けるが、俺は途中の花巻で本線とはお別れ。共に乗車する地元民たちも、一日中続く雨のせいか皆陰鬱な表情をしているように見える。

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それでも、列車は時間と共に否応なしに前へ進む。平泉で、水沢で、そして北上で多くの乗客たちが降りて行き、一ノ関からずっと列車に乗り続けている客は俺を含めて数える程になっていた。

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花巻に到着する頃には、辛うじて雨は上がっていた。


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世間も長期休暇を迎える頃合いのため、もう少し釜石線に乗り換える客は多いかと思っていたが、ホームには人は殆どいなかった。


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新幹線で新花巻まで足を運び、新花巻から釜石線に乗り換える旅行者が多いのだろうが、たまには内陸と沿岸を結ぶ路線に端から乗ってみたいという誘惑には駆られないのだろうか。

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勇ましい音を立てて気動車がホームに入って来た。出発まで少々時間があるが、早速ドアを開き席に座った。この瞬間から、俺が岩手で過ごす一番長い夏が始まったのだ。