遠野放浪記 2014.07.27.-05 或る一日の終わり | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

夏の夕日は力強く、一日の最後の輝きを放ちながら強烈な印象を残して山の向こうへ消えて行く。


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ひとたびその姿が山陰に隠れると、途端に地上は濃い影に支配される。

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雲と、藍色に移り行く空とのコントラスト。くっきりと塗り分けられた光と影、そのシルエットだけが明確になる山の稜線。何よりも美しい時間帯が始まる。

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東の空にもひたひたと夜の影は忍び寄る。街も川も透き通るような紅色に染まり、そして暗闇の中に消えて行く。

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空は青から藍色に変わる間のほんの一瞬だけ、悲し気な橙色に染まる。刻一刻と変わり行く空の色は、これから大いなる眠りに就く大地の感情をありのままに表しているようである。

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列車が宇都宮に到着するまでの一時間弱、俺はこの空の色を記憶に留めておくためにずっと外を眺めていた。太陽は間もなく空の彼方へ消え去り、最後の乗り換えを済ませる頃には夜の闇が取って代わっていた。