東北本線に乗り換えた俺は、野暮用があって途中の品井沼駅で下車。数時間の寄り道の後、再び東京への帰途に就いた。
昼が近かったので、瓶詰の穂先メンマをおかずにごはんを済ませた。誰も来ない夏の駅で、たった独り食べるごはんも良いものだ。
品井沼は仙台よりも北にある、宮城県北の原風景の中にぽつんと立つ小さな駅だ。日本の夏がこの小さな街にあった。読者諸氏も是非、機会があったら訪れてみていただきたい。
列車に乗るとまた、終わりに向かう旅を続けなければならない寂しさが込み上げて来る。小さな夏が、この場所に置き去りにされて行く。列車は無機質なコンクリートジャングルに向け、無情にもその歩みを進める。
宮城から福島へ渡り歩き、何度目かのこの光景を見渡しながら旅をする。夢のような風景の中へ、列車はゆっくりと下って行く。
春も夏も秋も冬も、見慣れた場所の筈なのに、時間の流れはその中に刻一刻と変化を加え続けている。いつか今見た風景も、俺の知らないものになってしまうのだろうか。
永遠に続くかのような田園と夏の空。あの向こうに稔りの秋、そして白と灰色の冬が待っている。
東北から北関東へ、長い旅も確実に終わりが近付いている。
