水田の中を縫う畦道を歩くと、時折大きな道にぶつかるが、ひとつとして同じ場所には辿り着かない。車窓から見ているあの小さな風景と同じ場所だとは思えない、とてもとても広い世界だ。
白や黄色の花々の中に、タンポポの綿毛も混じっている。次に風が吹けば、彼女たちもそれぞれの旅を始める。
昨日学校へ行くために歩いた道に合流する。結構歩いて来たわけだ。
坂を上り、今歩いて来た田園地帯を見下ろす。淡い太陽の光がぼんやりと浮かび上がり、幻想的な趣である。
遠く、岩根橋へ向かう峠方面まで見渡せる。このような風景を日常として過ごしている人々は、毎朝精魂込めて稲を育てている水田に出る度、何を思うのだろうか。
上の通りから再び未舗装の道を下り、田園のさらに奥に入ってみる。
この先は俺ももう殆ど知らない世界だ。