学校を出る前に、隣にあるグラウンドに立ち寄ってみた。
此処ももう人の手を離れて久しい。
夕闇が迫る宮守の空に、雲が寂し気にたなびいてグラウンドに暗い影を落としている。
かつては運動部の子たちが元気に駆け回っていたであろうグラウンドも、今や雑草に支配され、緩やかに自然に還りつつある。放置されたサッカーゴールやホームベースだけが、当時の記憶を辛うじて留めている。
グラウンドと校舎は石段でも繋がっていて、直接行き来することが出来た。今はこの石段も荒れ果て、歩くのは危ない。
人が造ったものは所詮、自然の前に成す術も無く朽ち果てて行く運命なのだろうか。
楽しい祭りの後に押し寄せる、遣る瀬無い寂しさが俺の心を支配しつつあった。もう、戻ろう……。
宮守の街外れに広がる田園に、もう水が張られていた。今日は雲が多いが、その向こうに輝く夕陽が淡いピンク色の光を地上に投げ掛け、無数の水鏡に反射している。
あんなに遠くまで、人々の暮らしは広がっている。これから訪れる暗い夜を、どう乗り越えて行くのだろう。
沈み行く太陽の、最後の光が田園を美しく照らしていた。閃光のような一瞬の輝きが消え果ると、宮守に夜の帳が降りて来る。