山に囲まれた僅かな平地、人里離れた場所にも、変わらず水が張り若い稲が植えられている。一年のうちの僅かな期間しか見られない、命に満ちた光景だ。
時々、人々が寄り添って暮らす小さな集落が現れては消えて行く。
やがて街が近くなり、人々の生活の匂いがして来るようになるに連れ、水田の区画も規則正しく区切られるようになった。
白石の中心に差し掛かり、視界が開ける。あの遠くに見えるのは、蔵王の山々だろうか。
白石城などを擁する市街地を抜け、白石川の畔に佇む東白石駅を通り過ぎる。東北本線の中で、俺が一番好きな駅だ。
川向こうには東白石の街が見えるが、近くに大きな橋も無く、まるで別の世界のようだ。
白石から先、また暫くは小さな街が現れては消える、静かな風景が続く。山も田園も川も、あっという間に後方に流れて行ってしまう。
それでも否応なしに旅は進み、仙台が近付くと俄かに車窓に映る家や人々の数が多くなる。
列車の旅はようやく半分。この旅においてはまだまだ序章だ。

