列車は街から街へ、山深い場所へ旅を進めて行く。
車窓から遥か下に、ミニチュアのように小さな集落が現れては消える。季節が進み、時代が進めど、このあたりに流れる空気はあまり変わることがない。何だか嬉しい。
視界が開け、一面の水鏡が姿を現した。山に抱かれた場所で、今まさに春から夏へと季節を進める準備が行われている。
このあたりでもまた、荒涼としていた大地に水が湛えられ、数多くの若い命が顔を出している。愛と哀しみに満ちた場所にも、新しい季節は訪れるのだ。
列車は幾つもの小さな街に見送られ、季節の後を追うように旅を続ける。
人の暮らしはときに遥か遠くに見え、またときにはすぐ眼前の水鏡に映り込む程に近くに見える。
水田だけではない。数々の野菜や花も、同じように夏を前にして眩い太陽の光をいっぱいに浴びて笑っている。
間も無く郡山。また次の乗り換えが待っている。

