遠野放浪記 2014.04.29.-03 ひとつの旅路 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

季節が進む地上の銀河を、汽車は時折勇ましい汽笛を鳴らして進んで行く。まだ田植えの季節には少々早いが、桜や菜の花が春を告げる場所を通り掛かると、その度に旅人の心は弾む。


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三郎堤の桜並木もほぼ満開だ。白鳥たちはとうに北の国に帰ってしまっただろう……。

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小山田駅と新花巻駅の間にある三郎堤は、エイスリンちゃんが初めて来日したときに訪れたり、白望ちゃんたちと仲良くなってから皆で歩いた場所だ。俺にもいつか訪れる機会があるだろうか。

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やがて汽車は花巻市街地に入り、風景が一変した。汽車の旅はもう間もなく終わりだ。

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昼下がりの花巻駅は人もあまりいなく、暖かい春の風だけが屋根を支える柱の間を吹き抜けて行く。このままずっと、行き交う人々や汽車を眺めて立ち尽くしていたい気分だ。

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空は今や爽やかなセルリアンブルーに染まっている。此処からは、列車を乗り継いで南へ下る旅が始まる。

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まるで暖かい空気が時間を止めてしまったかのようにさえ感じられる。しかし、列車は時間通りに到着し、俺を幻想の世界から連れ出して行くのだろう。