遠野放浪記 2014.04.28.-12 永久に流れ | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

小烏瀬川が道を外れ、再び山の中に姿を消して行くその境界で、俺は足を止めた。川は旅人を見送るように、険しい岩場の間を小さな滝のように轟々と水飛沫を上げて流れ、咆哮を残して別れを告げる。

数時間後には、下界で再び小烏瀬川と出会うことだろう。しかし川の流れは速く、俺が里に下りる頃に、この名も無い滝で俺の目の前を流れ過ぎて行った水滴は遥か大海原を目指して旅をしていることだろう。


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どうどうと流れ、袋小路で渦巻いて刻一刻と形を変え、川は気の遠くなるような長い旅を続けて行く。

この滝から先は、人が触れてはならない小烏瀬川だけの時間だ。俺は俺の道を、小烏瀬川は小烏瀬川の流れを歩み、やがて互いに全く違う顔で再会するときが来るだろう。