街へと下る小烏瀬川、この先で俺と別れてどのようなルートを辿るのか。
河原に降りられる場所は何ヶ所かあったが、その多くは降りても殆ど足の踏み場がなかったり、岩場で流れが速く危険な場所ばかりだった。
もう少し川を下ってみると、比較的穏やかな河床に面した場所を見付けた。
急な山の川の中にあって、この場所だけは不思議と殆ど水飛沫が上がらず、至って穏やかだ。
下流だけでなく、源流に近い山奥にもこのような淵のような場所があるのが不思議だ。それも突然、全く別の川になってしまったかのように表情が変わっている。
このような小烏瀬川の表情を見ると、流域の至るところに河童の伝説が生まれたことにも納得が行く。
ほんの僅かな清流の後、川は再び激流に姿を変え、ひと息に下界を目指して山を下って行く。
岩場をどうにか渡り歩いて川に付いて行ってみたが、この先に再び道路に上れる場所は無く、小烏瀬川は間もなく人間に別れを告げて森の中に姿を消して行ってしまう。
時の流れが巻き戻されないのと同じで、川の流れも決して同じ場所に留まることは無い。



